ニューヨークで10月23日より3日間タイムズスクエアにある映画館AMC Theaterにて「全米高校映画祭」が行われた。受賞者には50万ドル以上の賞金や奨学金が送られたというから、かなり本気度が高い。
福岡県立筑紫丘高校(福岡市)の元女子高校生らが制作した映画「今日も明日も負け犬。(英語版タイトル Re;Birth)」も出品となり、日本から渡米。
授賞式前に、ニューヨークのグランドセントラル駅横にあるホテルに滞在中だった彼女たちに直撃取材させていただいた。
今回、日本からこの大会へ出場できるのは1作品のみだったという。昨年12月に日本で行われた映画甲子園で最優秀作品賞ほか11の賞を勝ち取った作品であったため、出品できる流れとなった。
同作品は、自律神経の不調で体調不良や朝起きられないという「起立性調節障害」を発症した西山夏実さん(監督)の実話がもとになっており、人々にもっとこの病気のことを知ってほしいという思いから、映画を制作したという。
まずは監督、西山夏実(にしやまなつみ)さんのお話から。
「先ほどまで私たちの作品を上映していたのですが、アメリカでも伝わるのかなっていうのは気になりました。昨日、クルーズがあって(全米映画祭主催の交流イベント)、そこで仲良くなった17歳のアメリカ人の女の子が、涙目になりながら、『とても感動したので、必ず一票入れる(観客投票)』と言ってくれたのは、嬉しかったです。
今回、異空間(タイムズスクエアの映画館)で自分たちの作品が流れているのは、不思議な感じでした。英語の字幕は主催側に入れていただきました。
もともと映画は60分の作品ですが、出場規定で20分だったので編集しました。60分あっても伝えるのが難しい内容なので、20分になると別作品になるだろうから、伝わらないだろうし、いっそのこと出品しないほうがいいという意見もありました。
そもそもアメリカであまり知られていない病気なので、病気の内容をわかってもらえないというリスクをとるより誤解されないように、病気の内容はカットしました。
日本では、病気に関しての情報をひろげたかったのですが、こちらでは、人との繋がりの部分に集中しています。主人公2人の関係性が物語の中心となるよう、戦略を変えていどみました。」
脚本を担当した小田実里(おだみさと)さん。
「日記を書くことを続けていて、書くことは好きなのですが、ストーリーは書いたことがなかったです。この映画で脚本というものを初めて書きました。映画を全部みてほしいので、カットしてほしくなかったですが、20分という規定だったので、仕方なかったです。。。」
主演女優の古庄菜々夏(ふるしょうななか)さん
「地元ではお芝居を劇団の人から学んで、地域の舞台やミュージカルに出ていました。クラスで西山さんと席が隣になったことから、お芝居や映像が好きという共通の話題で仲良くなり、3ヶ月後には一緒にミュージックビデオなども作っていました。
今は、青山学院大学へ通っていて総合文化政策学部で、映像や映画制作を学んでいます。実際に2、3年生になったら映画を作ったりします。女優業も両立してやっていけたらいいです。」
スタイリストと広報、そしてニューヨークで通訳を担当している古賀月海(こがつぐみ)さん。
「幼少の頃に父の出張で、ロングアイランドに4年間住んでいたことがあったので、今回は通訳もやっているのですが、実際に英語でコミュニケーションがとれているので安心しました。映画の制作中はスタイリストをやっていましたが、今は広報を担当しています。
映画は、アメリカのほかインドやドイツのハンブルグ映画祭でも上映されました。今後は日本はもちろん、もっと世界で幅広く上映を目指しています。」
彼女らは、高校を卒業したばかりで4人でニューヨークへやってくるパワーあふれる女性な上、すでに映画の製作会社として起業もしたのだという。
今回の映画祭は、ジャンルもバラバラで、ドキュメンタリーもあれば、ホラーやコメディー、アニメーションもあったのだとか。使ってる機材も違うのか、レベルの高い作品も多かったというのが、それぞれの感想のようだ。
ベスト・インターナショナル・フィルムでノミネート作品にあがったが、残念ながら受賞はのがした。それでも、まだ10代の彼女たちにとって、世界へ出て挑むという点で、とても良い刺激になったに違いない。さらにチャレンジを続けていってほしいと心より願う。<取材・執筆 ベイリー弘恵>
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