切腹ピストルズとアマンダ・コニシ(画家)がコラボーNYのオフィスビル一階がギャラリーとライヴスポットに

シカゴ日本映画コレクティブを終えて、ニューヨークへやってきた「切腹ピストルズ」のドキュメンタリーを撮った梅崎陽監督、切腹ピストルズ総隊長の飯田団紅、尺八奏者の野中克哉らと対面することができた。NY1page.comでは野中の尺八演奏NYソロデビューに関して取材させていただいた。

コラボをしたのは画家のアマンダ・コニシ。名前のとおり、彼女の父親はハワイ生まれの日系人。アマンダは、現在ニューヨーク在住で画家として活躍中である。

アマンダと野中に共通な友人の紹介で、今回コラボが実現したという。尺八を演奏した場所は、普通のミッドタウンにあるオフィスビルの一階なのだが、照明やスペースは透明感があってソーホーあたりのギャラリーっぽい。そしてアマンダの透明感あるけど、力強く、癒やしの効果もありそうな絵が美しい。

アマンダ・コニシと私のお気に入りの絵 ©NY1page LLC


私が特に気にいったのは藍色の花のような絵。点や線で描かれている部分があったり、黒い糸が貼り付けられていたりとユニーク。そんな素敵な絵に囲まれる中、尺八の演奏が始まった。

野中の持参した尺八は、1本だけ購入したものを除いてはすべて手作り。大きさによって音色はもちろん違ってくる。

カナダに留学経験もあるため、英語も流暢だ。演奏の合間に尺八という音楽がなぜ始まったのか、※1.虚無僧(こむそう)について、尺八のお値段や文化について解説もあった。歴史は私が苦手なので割愛する。とても私にとって印象の深かったお話だけをあげる。

「尺八は仏教にも関わっているため、その音は、無念夢想の世界に入る助けになる。ニューヨークの雑踏の音さえもそれが雑音ではなく音楽の一部であり、尺八はその音の一部になることができる」つまり尺八の即興演奏は、NYジャズの世界で例えるなら、環境との※1ジャムセッションのようなものだ。


野中の尺八ライブの模様 ©NY1page LLC

そう聞いた後から野中の尺八の演奏を聴いていると、尺八を演奏している真っ最中、轟音を鳴らしながらビルの真横を救急車が通ったのだけど、まったく気にならなかった。いつもは、救急車の轟音を聞くと、緊張感にさいなまれるため、なんとも不思議な感覚だった。

「虚無僧は、落ちぶれた武士がストリートパフォーマーになっていたこともある」という説明もわかりやすくて、「人の前で勝手に演奏しておいて、見物料を強引にとるというギャングみたいなノリも一部にはあった」というところでは、会場へ来ていたニューヨーカーからも笑いをとっていた。

音楽は独創の世界であり、虚無の世界を描いた野中の音楽を聴いているときは、目を閉じて瞑想している人もたくさんいた。尺八というものを改めてニューヨークで聴いてみると、※2.禅に通じる音だからこそ、邪念や不安な心を洗い流すことができる。加えて日本の江戸時代に庶民の文化に根づいた音だからこそ、親しみやすく抵抗なく受け入れられるのかもしれない。

ニューヨークでは、バイオリンやチェロ、サックスなど、ストリート・パフォーマンスによって癒やされる音楽というのは案外、普及している。そんな中、尺八も新たなるストリートパフォーマンスとしてアリなんじゃないか?って思った。

私もかつて仕事帰りに、タイムズスクエアの地下鉄の駅で演奏していたアフリカン・ドラムのストリート・パフォーマーの音に癒やされ、涙したことがあった。一瞬なのだけど、ストリートから入ってくる音というのは、まったく意外なときに、思いのほか癒やしを得られるものであり、貴重なものだと思い知らされた。

アメリカは、今、アジア人に対するヘイトクライムや、銃規制がない地域での銃乱射事件が多発し混迷している。だからこそ、こうしたストリート・パフォーマンスによって、アメリカで煩悶する人たちの精神を整える手助けができるのではないか?そう言えるくらいに、野中の尺八の音は、癒やしやパワーを与えてくれる。

日本に根付いてる文化は、癒やしの効果はもちろん、日本人だからこそ有している闘争本能をいったん冷静な方向へと導く効果をもっている。(日本人には、仏の顔も三度までという言葉もある通り、闘争や防衛本能を持ち合わせていないということではないが・・・)だからこそ日本の尺八の音は、世界の人々へ癒やしを与える効果は大きいのかもしれない。

※1.虚無僧〘名〙 禅宗の一派の普化宗(ふけしゅう)の僧。尺八を吹き喜捨を請いながら諸国を行脚修行した有髪の僧。江戸時代、罪を犯した武士は普化宗の僧となれば、刑をまぬがれ保護された。多く小袖に袈裟(けさ)を掛け、深編笠を被り刀を帯した。古くは、「こもそう(薦僧)」ということが多く、もと坐臥用のこもを腰に巻いていたところからという。普化僧
精選版 日本国語大辞典「虚無僧」より>

※2.ジャムセッション・・・本格的な準備や、予め用意しておいた楽譜、アレンジにとらわれずに、ミュージシャン達が集まって即興的に演奏をすることである。 <ウィキペディアより>

※3.禅は、仏教用語として「心が動揺することのなくなった状態」を意味する サンスクリット語「ध्यान」の音写である禅那の略語で、類義語として、三昧や定と訳されるサマーディがある。<ウィキペディアより>



総隊長の取材はNewsweekのほうへ掲載する予定です。監督の取材はYoutubeにて後ほどアップします。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください