田中真夏(Manatsu Tanaka) Instagram Official Website Official LINE
神奈川県出身 ニューヨーク在住
ノンバイナリー(they/them) イマーシブシアター役者/身体表現者
1歳から6歳までをサンフランシスコとミネソタで過ごす
6歳からピアノを弾く(耳で覚えて雰囲気で弾く)
想像力が豊かで役になりきって遊ぶのが好き
絵を描くのも好き
12歳、劇団四季の劇を見てスポットライトを浴びる仕事に興味を持つ
高校のダンスプログラムで1週間留学
ダンス留学 アメリカへ
大学卒業後、NYでイマーシブシアターの役者として活躍中
波濤流殺陣(はとうりゅうたて)・アクション・エアリアルシュルクを学ぶ
2022年8月6日・8月7日、日生劇場「エリサと白鳥の王子たち」出演予定
2022年10月8日・10月9日、神奈川県民大ホール (横浜)「浜辺のアインシュタイン」出演予定
しゃけ:
イマーシブシアターで活躍中とのことですが、イマーシブってどういう意味でしょうか?
真夏さん:
日本語では「体験型シアター」といわれていますが、2000年ごろにイギリスで生まれた新しい演劇の形です。劇場のスペース自体が一つの物語というか世界、劇の一部になっています。観客席はなくて、観客は行きたい場所に自由に移動できます。アクターたちには一人一人にそれぞれの脚本があるので、一つの世界のなかにストーリーはいくつもあって、どこで立ち止まるかというのは観客任せです。どこでどんな感動が生まれるのかはその日によって、その人によって変わります。
しゃけ:
!!面白い!!アーティストたちがアートで、美術館でパーティーのような?
真夏さん:
そうですね。日本では「DAZZLE」(ダズル)というダンスカンパニーが主催した日本初常設イマーシブシアター「Venus of TOKYO(ヴィーナスオブトーキョー)」(2021年6月5日〜2022年3月27日)が最近ではホットトピックで、私も盗賊役で参加させていただきました。作品の中(二階建ての居酒屋を改造して舞台にしたスペース)に観客がトリップする感じで「没入型演劇」とも言われています。
現在NYで関わらせてもらっているプロジェクトでは、ブロードウェイでもキャリアのある振付師やキャストたちがたくさんいて、いつかはブロードウェイで・・・という企画の一番初段階のプロセスに参加させていただいています。
しゃけ:
すごい!夢はもう叶っているんですね?
真夏さん:
ここ数年毎年「今年は人生で一番最高だ!」って思っていましたが、まさに、今、来てますねー、最高です!(笑)今まで個々の鉢に種を植えてせっせと育ててきたものを集めて、大きな花壇に植え替えたら、急に元気に花を咲かせ始めたという状態と言うんでしょうか。波に乗ってきたー!
しゃけ:
いいですね、まさにアツアツな状態ですか?
真夏さん:
名前も真夏って暑いでしょう?(笑)パッション溢れて暑苦しいんですよ。自分としては70%の力を出しているつもりなんですが、周りからは「200%出てるよ」って言われます。昔から熱い人間なんです。
ここまで振り切れたのはニューヨークという場所のおかげでもあります。6歳までは親の仕事の都合でアメリカ育ちだったんですけど、小、中、高校生は日本で過ごしました。その間ずっと「アメリカに帰りたいな」と思っていました。小さな場所で小さな枠に強引にはまろうとして自分で自分の首を絞めていた時期もありました。大学で再びアメリカに来れて、今まで隠してきた本当の自分をすべて解放できた気がします。きもちいいー-!
日本が嫌いというわけではないんですが、私はLGBTQということもあって生き辛いことがありましたね。日本では毎日胃薬を持って生活していました。アメリカでは「あなたの常識は私の常識でないことは普通」。出る杭打たれてもシリコン製の杭の様に埋もれることなく元の形にすぐ戻る。特に芸術の世界では各々の個性と感性をお互いに出し合って大きな絵のパズルを完成させる仕事現場なのでまさにNYCは私が一番大鷲の様に羽伸ばせる場所ですね。胃薬不要です!(笑)
私がSNSでよくLGBTQのストーリーを共有するのは、日本にいたら広がる事がなかった視野がNYCで生きたことによってどれだけ変わったのかを伝えたいからです。LGBTQの話が日本語で話されることはほとんどありません。日本人と日本語で話し合うことが理解を深める第一歩だと思います。「気を遣う」と「リスペクト」は同じものではないと思います。アイデンティティだけにとどまらず、育ちやバックグラウンドや考え方も個性も色も含めてお互いの違いをリスペクトし合える人がもっと増えたらいいなと思っています。
しゃけ:
自分のことが大好きになれたら生きやすいですよね。
真夏さん:
そうなんですよ。20歳くらいまでは「私はこれだけのことができる」「もっと評価してほしい」という思いが強かったし、人と比べて不器用な自分のことが嫌いだったんですよね。でも「その不器用さがたまらなくかわいい」と褒めてもらったことをきっかけに考え方が変わっていきました。
え、そうなの?むしろそれが私の強みなの?って。人より時間はかかるけど、感覚をつかんだら早いんだってことにも気がつきました。やると決めたことは途中であきらめられない性格なので、私は好きと思った事は掴んで離さず、没頭することが得意なんだ!って思えるようになったら、「あ、私のポテンシャルってすごい!」って心から思えたというか。本当の意味の自信ってこういうことなのかな。自分を信じることができるようになったから今、無敵ですね。
しゃけ:
わ!最高!日本語も英語もできるし、分析能力もすごい!そしてタフ!勉強も得意なんですか?
真夏さん:
勉強で楽しかった思い出はあまりないですね。英語は感覚で話しているし、ピアノは楽譜で練習とかは無理で、感覚だけで弾くなら大好きです。
今は殺陣(たて)やエアリアルシュルクに夢中になっています。
しゃけ:
カメラの前で演技をするのではなく、舞台でやりたいということにこだわりはあるのですか?
真夏さん:
映像の世界も楽しいとは思いますが、今のところ観客の皆さんとエネルギーの交換/交感がその場でできることに一番幸せを感じます。劇場には誰が来るかはわからないですよね。男なのか女なのかノンバイナリーなのかジェンダーも関係ない。ステータスも人種も関係ない、その日が最低な日だった人も最高な日だった人も知らない人同士が一つの空間に集まって観客/演者/スタッフ全てひっくるめて同じ何かを体験して共有して時間を過ごす。その中でなにかしらの感動が生まれるってすごいことだと思いませんか?「なんて平和なんだろう!」って。
しゃけ:
平和!なるほど。確かに。感動を共有しあえたら戦争にならないですね。
真夏さん:
そうなんですよ。もともとダンスは平和の象徴というか。火の回りに集まって豊作を祈りながら踊るというのが起源ですよね。人類が平和でありますように!っていう儀式から始まっていると思いますが、今もそんな気持ちです。
踊ることで、たった2時間でもたった1秒でも誰かと何かを共有したり、会場全体が一体になれる感覚。レイブ(主に屋外でダンスミュージックを大音量で流すイベント)とかも何千人もの知らない人たちがこうして一つの倉庫に集まって同じ音楽、照明、スモッグ、振動を共感してるって平和。表現を楽しむ時間というのは、人間にしかできない貴重で幸せで平和な瞬間です。
しゃけ:
今年の夏は日本で仕事があるのですか?
真夏さん:
はい。8月に「エリサと白鳥の王子たち」(日生劇場)の公演があるので帰国します。10月には「浜辺のアインシュタイン」(神奈川県民大ホール)というオペラでコンテンポラリーダンサーとして出演予定です。振付家の平原慎太郎さんををはじめ、素晴らしい先輩方と共演できるのを楽しみにしています。
2022年8月6日・8月7日、日生劇場「エリサと白鳥の王子たち」出演予定
2022年10月8日・10月9日、神奈川県民大ホール (横浜)「浜辺のアインシュタイン」出演予定
田中真夏さん×しゃけの音声インタビューはこちらから