オペラと日本文化を一緒に紹介したい——日本人ソプラノ歌手宗田舞子さん

昨年、全世界の音楽家の憧れであるカーネギー大ホールでのデビューを飾り、今週末に自身初のソロリサイタルを控えるソプラノ歌手・宗田舞子さんのインタビューです。ソロリサイタルについてや、歌の道にすすむきっかけ、今後の目標についてもお聞きしました。

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——いつ頃からオペラ歌手を志すようになったのですか?

実は大学はピアノ科でした。中学の頃にコーラスクラブに所属していて、そのときは伴奏をしたくて入部したのですが、先生にあなたは声が良いから歌の道に進んだらと言われたのですが、そのときはオペラもまだ見たことがなくて、ピアノがやりかったので歌は趣味でやっていました。大学もそのまま初志貫徹でピアノ科に進みました。大学で色々な人の伴奏をする中でオペラを聞くようになり、歌の素晴らしさを知りました。大学二年生のときに副科で声楽をとりました。そこで大学の先生にも声が良いから歌の道に進んだらと言われました。大学は兼科が出来なかったので、四年間ピアノ科に通い、卒業してから声楽のレッスンに通い始めました。

——つまり、大学卒業後から本格的に歌の道に進んだと言うことですか?

そうですね。それから色々な先生のレッスンを通いました。二期会オペラ研修所に二年間通い、32歳のときにイタリアで夏のサマーコースでレッスンを取りました。34歳のときに主人の転勤でアメリカに来ました。こちらに来て4ヶ月目のときにジュリアード音楽院の社会人用のクラスに1年半通っていて、そのときにジュリアードで出会った友人にフランシスコ・カサノヴァ先生を紹介してもらいました。この先生はメトロポリタンオペラの大スターで、あのパヴァロッティの控えをしていたこともある有名な方です。今はその方のところに通って1年半程です。フランシスコ先生に通い始めてからどんどん声も変わってきました。昨年の9月と10月にはマーキンホールとカーネギー大ホールでチャリティーコンサートにも出演させて頂きました。

——カーネギー大ホールでのデビューはいかがでしたか?

最初は大きなホールでオーケストラやコーラスの方もたくさんいて、自分の声が届くかどうか心配だったのですが、良いホールなので少し鼻歌を歌っただけで三階席まで声が飛んで行くのがわかって感動しました。また、カーネギーでの公演後に先生に声が変わったと言われました。広い会場での空間や声の使い方も勉強になりました。

——着実にアメリカでの活動の幅も広げられている宗田さんですが、アメリカと日本の違いはどんなところですか?

アメリカのお客様は凄くストレートに感情を全面に出してくれますよね、スタンディングオベーションだったり。日本よりもっと熱狂的ですね。

——言語や文化の違いで苦労したこととかありました?

一年目にジュリアードに入ったときはとりあえず音楽の世界に身を置くことでわかることもあるだろうと思い、言葉はわからなくても良いという気持ちでした。その後、やっているうちに段々わかるようになっていきました。後は料理が得意なので、手料理を作ってレッスンに持って行ったりして心を通じ合わせました(笑い)

——宗田さんは子ども向けの歌のワークショップなども精力的におこなっていますよね。

はい。娘を今現地の日本人学校に通わせているのですが、そこには音楽の授業がないんです。こっちでは幼稚園や小学校低学年のときに日本の童謡を習う機会がない。日本の童謡には日本の情緒、季節や文化などが含まれているので、そういうのを色々子供達に教えたいと思って始めました。ただ聴かせるだけじゃなくて、子どもたちと一緒に歌って学んで行こうというようにしています。お母様方にもご好評いただいています。

——来週おこなう初めてのアメリカでのソロリサイタルは、どの様な公演にしたいですか?

花鳥風月をテーマにしていて、自然をテーマにした曲を選曲しています。前半はオペラの曲を歌い上げて、後半は日本の曲をしっとりと歌いたい。後半には琴と三味線とピアノで一緒に歌います。前半後半の聴きくらべをしてもらえたらと思います。また、お琴と一緒に歌うのは初めてで今日リハーサルをしてきたのですが、いい感じです。なかなか和楽器とソプラノ歌手の共演というのはないので日本人以外の方にも見て頂きたいですね。日本人の方には後半の日本の歌で故郷を思い出して懐かしい気持ちになって頂ければと思います。

——特に注目して欲しい曲などはありますか?

後半に歌う曲の中に「千の風になって」があります。実はこの曲、秋川雅史さんが紅白で歌うちょっと前に私もCDを出してるんです。この曲は戦争に行った兵士の方がお母さんに送った詩が基になっていて、9.11の追悼式でも朗読されたのでこの詩自体はアメリカでも知られているのですが、曲はあまり知られていないので、アメリカ人の方に聴いてもらいたいですね。

——今後の活動ご予定は?

秋にCDを出す予定で、この夏にレコーディングをします。テーマはリサイタルと同じで花鳥風月です。また今後もオペラと日本の文化を一緒に紹介できたらと思います。アメリカには日本人のオペラ歌手はなかなかいないので、私にしか出来ない様なことが
出来たらと思っています。

——なるほど。今後の目標などはありますか?

オペラって積み重ねが大事で、発音の仕方や表現の方法など目標に終点がないんです。終わりがない分どんどん可能性がでてきて、声も年齢によって変わって行くし、やっていてとても面白いんです。オペラって同じ曲を色々な歌手が歌っていて、それぞれの個性が楽しめる。これはオペラならではだと思います。

——ではこれからアメリカのエンターテイメントの世界に挑戦しようとしている若者へのメッセージなどありますか?

私もまだアメリカで一歩を踏み出したばかりでどうなっていくかわからないのですが、他の国にくらべてニューヨークはエンターテイメントがとても盛んな国です。色々な刺激を受けて私もアメリカにいる間に、ここでしか出来ない様な活動をして行きたいと思っています。色々な可能性があるし、世界も広がると思うのでこれから若い人にも挑戦してもらいたいですね。

Maiko Souda Soprano Recital
“The Beauty of Nature”
6月22日 (日) 7:00開場 7:15開演
マンハッタン オペラアメリカ
330 seventh ave
Online ticket http://bpt.me/699178
$25(adv)$30(door)

宗田舞子 (Maiko Souda)

http://www.maiko-souda.com/

3歳よりピアノ、クラシックバレエを始める。東京音楽大学ピアノ科卒業。同研究科オペラコース2年修了。東京ソナーレピアノコンクール金賞受賞。ソレイユ新人オーディション入選。日本サロンコンサート協会オーディション最優秀賞。コンセール・ヴィヴァンオーディションでピアノ、ソプラノ両方で合格。全日本演奏家協会オーディション優秀賞。大曲新人音楽祭入選。日本クラシックコンクール好演賞。

2011年渡米。
2011年、2012年8月イタリア・ベッルーノ市にて夏期講習会に参加。ベッルーノ歌劇場、カステルフランコ歌劇場にてオーケストラと共演。
2013年2月Metropolitan International Music Festivalのオーディションによって選出され、テノール歌手のSteven Tharp氏のマスタークラスをManhattan National Opera Centerにて受講。
2013年3月NJ・Ridgewoodにおいて「東日本大震災チャリティーコンサート」を開催する。
現在、ジュリアード音楽院opera work shop classに在籍。Vincent La Selva氏に師事。
2013年6月より世界的テノールFrancisco Casanova氏の元でレッスンを受け始める。
2013年9月第6回風の環コンサート マンハッタン マーキンホール 及び10月第2回日米合唱祭 カーネギー大ホールに”Memorial Processional”のソプラノソリストとしてNYデビュー。
2013年12月東京ルーテル市ヶ谷ホールにてトリオコンサートを開催。
汐留ホールにてクリスマスコンサートを開催。

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