ミュージカルえんとつ町のプペル”Poupelle Of Chimney Town”のピアノ・コンダクター松浦麻未さん

先日はNY1PAGEのライターしゃけさんにより、ミュージカル「えんとつ町のプペル」“Poupelle Of Chimney Town”の作曲・音楽監督のKo Tanakaさんに取材させていただいたが、今回はそのピアノ・コンダクター松浦 麻未さん(ピアニスト)にベイリー弘恵がお話をうかがった。

――お母さまがミュージカルを好きだったことに影響されて、ニューヨークに幼少のころ家族でミュージカルを観に来たこともあるとか?ずーっとこれまでミュージカルが好きなんですね。

「はい、幼少の頃から、ミュージカル好きの母にさまざまな公演に連れて行ってもらいました。人生で初めて観た作品は『レ・ミゼラブル』、そしてニューヨークのブロードウェイで観たのは『オペラ座の怪人』『美女と野獣』『ライオン・キング』です。それぞれとても印象に残っています。

家の中では、いつもミュージカル音楽が流れていました。高校生になってからは、当日券などの安いチケットを探して一人で観に行くようにもなりました。ミュージカルのオーケストラピットに憧れるようになったのは、ちょうどその頃です。劇場に行くたび舞台の幕間にオーケストラピットをのぞいて、いつか私もこの中で演奏してみたいなって思うようになったのです。

思えば、大好きなミュージカルのCDに合わせて伴奏をしているところへ母が来て、歌ったり踊ったり(笑)」

――まるでミュージカルのスターと演奏家が家にいるみたいですね(笑)プチシアターみたいな?

「そうですね(笑)とても楽しい時間でしたし、その思い出は今につながっていると思います」 

――高校卒業後は、日本で音楽大学をでて、アメリカの音楽大学でミュージカルの演奏を学んだきっかけを教えて下さい。

 「音楽大学に進学してクラシックを専攻していた自分にとって、アメリカへの留学は予想できなかった方向へ進むことになりました。それは大学4年生のとき、ジャズピアニスト・山中千尋さんの授業を直接受ける機会に恵まれたからです。

日米を行き来して活躍されている山中先生の、刺激的で素晴らしい授業に、私もアメリカで自分を試してみたい!という夢や向上心を強く後押しされ、バークリー音楽大学を受験、進学しました。

留学生活にも少しずつ慣れてきた2018年のある日、同じ授業を受けていた友人から『手を負傷してしまったので、数日後にリハーサルが始まるミュージカル公演でのピアノ代役をお願いしたい』と急遽連絡が入ったのです。正直なところ多忙を極めてはいたのですが、一番に思い起こしたのは“ミュージカルの音楽に関わる仕事に就きたい”という高校生の頃から抱いていた夢でした。

その作品がたまたま、渡米直前に観劇し大変心に響いた『Big Fish』だったこともあり、私で良ければとお引き受けしました。この出来事が契機となり、ミュージカルのオーディション、リハーサル・ピアニストのお仕事や、実際のオーケストラピットでの演奏、シンガーへの指導など、夢へと繋がる多くの機会に恵まれました」

――ミュージカルを演奏するという点で、アクターやシンガーに対する思いなどありますか?オーケストラピットで演奏したときの経験についても聞かせてください。

「オーディションという場では、ほとんどのアクター(役者)は緊張していますし、室内全体もピリピリした空気が流れていることが多いです。ですから、彼らから楽譜を受け取る時や歌い始めの合図を出してもらう時は、リラックスしてもらえるよう笑顔でいること、私に任せて!という気持ちでいることを心掛けています。

日頃から“私の奏でる音が、歌い手の呼吸そのままであるかのような伴奏”に努めるために、またアクターの皆さんに心地よく歌ってもらえるように、と考えているので、何よりも「歌いやすかった」と言ってもらえることが嬉しいです」

――さすが日本人の気配りですね。

「バークリー在学中の出逢いも、これを考える大きなきっかけの一つです。あるピアニストはユーモアで場を盛り上げたり、あるミュージックディレクターはアクター一人一人との対話の時間を大事にしていたり。それぞれタイプこそ違えど、彼らに共通して言えることは、ピアノを演奏することはもちろん、それ以上に人間としての魅力を持っていること。気がついたら皆彼らのことが好きになっているんです。私もそんなピアニストになれたらいいなと思います。

オーケストラピットではキーボードを使い、ハープや弦楽器、効果音まで何役もこなさなければなりません。音色を切り替えるペダルをスムーズに踏めるようになるまでは、想像以上に時間がかかりましたね。そうして迎えた初公演、カーテンコールの演奏をしているときにお客さんからの拍手が聞こえてきて本当に嬉しかったのを覚えています。私にとってカーテンコールは、劇場全体が一体となる特別な時間で、幼い頃から大好きな瞬間なんです」

――ミュージカルのおすすめのミュージカルや、好きな作曲家はいますか?それを、なぜ好きになったのかも知りたいです。

 「人間の弱さを描きながらも観終わると前向きな気持ちになれる『Dear Evan Hansen』、劇中のキャラクターを通してアクターたちの魅力が存分に引き出される『The Prom』、キャロル・キングの名曲だけでなく 大きすぎない劇場ならではの演出・舞台装置も魅力の『Beautiful』など、挙げたらキリがないのですが、一番といえばやはり『Les Misérables』です! 観るたびに発見があって、歳を重ねる毎に解釈を深めていける作品です。

好きな作曲家はJason Robert Brownです。『Songs for a New World』という作品を日本で観てから、彼の音楽の虜になりました。曲がとにかくカッコいいんです!彼自身もピアニストでありシンガーでもあるのですが、数ヶ月前にリモート公演で「I Love Betsy」という楽曲を弾き歌いしていてとても素敵でした。必見です!

 ――Jasonさんの音楽ってポップで歌詞もリアルなニューヨーカーのライフスタイルが織りこんであって楽しいですね。こんなコロナの状況であっても元気になって勇気づけられる音楽です。では最後にこれからのご自分について語っていただけますか?

「ブロードウェイのオーケストラピットで演奏することは、私の大きな夢です。バークリー在学中にNYで何本もミュージカルを観たのですが、それはもう舞台と観客の熱量がものすごくて。改めてブロードウェイの一員になりたいという思いが強くなりました。先ほど少しお話ししたJason Robert Brownの作品に参加することも夢の一つなんです。

自分がアジア人女性であるという面で、ハンデはあるかもしれませんが、それでも揺るがずに努力を続けていきたいなと思います。バークリー時代、私のまわりにはミュージカル業界を目指すさまざまな性別や人種の仲間がいたこともあり、皆がもっと活躍できる場を創っていきたいとも考えています。

実はいま、キャバレー(ダンスやショーなどの舞台があるレストランなど)や小劇場などで、自分たちも含め少しでも多くの人が舞台に立つ機会を持てる、また提供できる団体を、友人たちと立ち上げようとしているんです。ミュージカル業界で音楽を作る(広義での)女性たちをサポートするMAESTRAという団体に参加したことも大きいです。創設者のGeorgia Stitt氏の活動を見て、私もそういう女性に憧れるようになりました」

「人とのご縁を大切にしたいと日頃から思っています。そういう意味でも、NYという街は自分のやりたいことに常に正直に行動すること、そしてそれを発信することから始まる、と強く感じます。そうすれば、おのずと素敵な人と繋がるべくして繋がることができるんだなと。

”バークリー卒業後はNYで仕事がしたい”という思いのもと在学中から定期的に足を運んでいて、そのたびに素敵な出逢いがあったんです。ひょんな出来事がきっかけで昨年から携わることになった『えんとつ町のプペル』のお仕事もその一つ。その『〜プペル』に全力で取り組むこと、新作ミュージカルの制作、初のアルバム制作、そして今年開設したミュージカル音楽のアカンパニメント(伴奏)を中心としたYouTubeチャンネルなど、やること・やりたいことでいっぱいの毎日です。

 今こうして音楽ができているのは間違いなく、支えてくださった皆様、そして何よりもいつも応援してくれている家族のおかげです。だからこそ、今の私に出来ることを全力で頑張りたいと思っています」 
――COVID-19 から、まだブロードウェイのシアターは閉館したままのようですが、ミュージカルに携わるアーティストとして一言お願いします。

このような時期だからこそ、これからをより良くするための準備期間だと思って日々を過ごしています。最近は、ずっとやりたいと思っていたオンラインの活動に力を入れています。先ほどお話しした新作オフ・ブロードウェイミュージカル『えんとつ町のプペル』も、当初NYで上演予定だった9月19日(土)・20日(日)に、ZOOMでのオンライン公演を行うことになりました。この苦境の中、カンパニーメンバーの努力や多くの支えによって実現するこの公演、ぜひご覧いただけたら嬉しいです!

【プロフィール】

松浦 麻未/Mami Matsuura 

ピアニスト。神奈川県横浜市出身。5歳よりピアノを始める。桐朋学園大学音楽学部を卒業後、奨学金を獲得し米ボストン・バークリー音楽大学に入学。在学中Jazz Performance Awardを受賞。2019年に同大学を卒業後、ニューヨークを拠点とし、主にミュージカルのピアニスト・リハーサルピアニストやミュージックディレクターとして活動している。現在、西野亮廣氏原作・脚本のミュージカル「Poupelle of Chimney Town(えんとつ町のプペル)」オフ・ブロードウェイ公演の制作に、ピアノ・コンダクターとして参加している。

Mami Matsuura -Official Website


NY1page.com LLC、皆様からのご寄付大歓迎です!もっとたくさんのエンターテイナーをサポート、ご支援させていただくため、どうぞ宜しくお願いいたします。
 

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください