今年でニューヨーク国際フリンジフェスティバルは20回目を迎える。8万人近くの人たちが世界各国から集まるアメリカにおける最も大きな演劇祭の一つで、200以上の団体がダウンタウンにある劇場で演劇やパフォーマンスなどの公演を行う。同フェスティバルから育まれ2002年にトニー賞を受賞した「ユーリンタウン」は、今もなお各国の人々に親しまれている。本年度、日本からも参加作品『大江山鬼伝説』が選ばれた。同作品は、宝塚を拠点とする女性ばかりのパフォーマー集団OZmateのオリジナル作品である。8月12日より5日にわたりFlamboyan 劇場にて公演される予定だ。公演のためにニューヨーク入りしているOZmate代表、辻井にお話をうかがうことができた。
まず鬼をテーマにした理由は、尼崎事件で主犯であった角田美代子がなぜ鬼のような人間に変わったのかを知りたかったことから始まったのだという。「どんな人間の心の中にも鬼は住んでいて、一瞬のうちに人間とって代わることができる。誰もが鬼になってしまう可能性をもっているのではないでしょうか。鬼となった人間の心の中を知りたい、描きたいと思いました」
OZmateは和の作品を演じることが多い。それは日本人という自分たち自身に向き合って生活していきたいからだという。「日本人はそもそも内面をださない人が多く、色にたとえるとグレーな存在だと思うのです。しかし平安時代には本能のまま生きてた人が多く、鬼もその時代に生まれたものです」
辻井は20年にわたってニューヨークを行き来しながら、ダンスを学んだりブロードウェーのミュージカルを観て研究を続けてきた。さまざまなミュージカルに何度も足を運ぶうち音楽を専門的に学んだこともなかったが、作曲できるまでに成長したという。それが今回の演劇で奏でられる21曲である。「日本とニューヨークのミュージカルの違いは、日本では宝塚の舞台などを象徴とするような日常からかけはなれた美しい人や夢の世界を描く作品がほとんどです。観ている観客もそれを求めているのかもしれません。しかしブロードウェーは、もっと人々の内面や日常を描いた作品が多く、その表現力もダンスの筋力の使い方や発声などに迫力を感じました」
辻井によると、毎年レッスンを重ねることによって、日本人もアメリカ人が持つダンスの筋力や発声の迫力をえることができるのだという。「私自身も毎年ニューヨークに通ってダンスのレッスンを続けることで、年ごとに筋力が増して表現力がつき、発声力ものびてきて成長することができました。OZmateの団員も、劇団を立ち上げたばかりの最初のころは客観的にみてまったくブロードウェーで通用しないと思っていましたが、レッスンを重ねていくうち、次第にのびていきました。そうして2年前くらいからようやくブロードウェーに通用するスキルへと到達することができたのです」
今回の見せ場は、和をほこる平安時代の衣装の美しさはもちろん、芸術的にもレベルの高い扇の美しさにあるという。オリジナルの音楽も和太鼓や笛など、美しさと同時に迫力ある演奏は、日本人の心に秘めたる鬼の内面を知ることができるであろう。(敬称略 執筆・撮影 ベイリー弘恵)
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【 プロフィール】辻井奈緒子(つじいなおこ) 1987年〜1990年まで、いずみたく主宰のミュージカル劇団フォーリーズ(東京 六本木)に在籍。数々の舞台に出演する。1991年、地元宝塚に戻り、ミュージカル・ダンスのスクール「スタジオOZ」を設立。1994年に、スクールの有志と共に「ミュージカルカンパニーOZmate」を旗揚げする。 作・演出だけでなく作曲も手掛ける作品は、子供から大人まで誰もが楽しめる〈メッセージミュージカル〉。 明日の活力となる、その作品の数々は、多くの人々の支持を得ている。
【Show Schedule】
The Clemente Center Flamboyan Theater
107 Suffolk St, NYC お問い合わせ thelegendofoni@gmail.com
Aug12@9:30PM (Fri)
Aug13@2:30PM(Sat)
Aug15@2:30PM(Mon)
Aug16@7:15PM(Tue)
Aug17@2:00PM(Wed)
【関連URL】
●ミュージカルカンパニーOZmateオフィシャルサイト
●The Legend of Oniフリンジフェスティバルのオフィシャルサイト
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