ニューヨークでも高評価をえた太鼓パフォーマー野武士

2016年も911日に9・11(アメリカ同時多発テロ事件) のメモリアルイベントが各地で行われた。 リンカーンセンター近くにあるMerkinコンサートホールでも「風の環コンサート」が開催され、福岡を拠点に活躍する和太鼓チーム野武士がゲストで参加した。野武士のメンバーがステージに姿を現すと、まるで観客それぞれが固唾をのむようにメンバーの動きを追っていた。青白いスポットライトに照らされたメンバーがバチをふりおろすと会場に割れんばかりの大きな太鼓の音がとどろいた。そこからは誰もが息をつく間もないくらいに太鼓の音が鳴りつづく。微動だにできないほど迫力ある音は、心地よい緊張感であり、それはさらに増していった。

nobushi2今回ニューヨークへ来た理由をリーダーの川原邦裕(かわはら くにひろ)に問えば、太鼓の音や彼らのパフォーマンスを身近に感じてほしいからだという。彼らは数年前から日本国内のみでなく台湾、フィリピンなどといった海外からも声がかかりパフォーマンスを毎年のように行っている。「有名になることを目的にしていないので、売り込みや宣伝は二の次でかまいません。ただパフォーマンスや音楽の中心はニューヨークだと思うこともありやってきました。日本にも世界の人は集まってきますが、日本にいる日本人以外の人たちは、外国人としてしか見てもらえません。ニューヨークのように世界各国からきた人が対等に同じ土俵で戦える場所だとは思えないのです。ニューヨークはその点、移民ばかりで栄えている場所だからかどんな民族に関しても寛容です」

ニューヨークでの野武士のパフォーマンスはマンハッタンの舞台ではもちろん、ニューヨーク郊外のパリセード・モールでも演奏し、大反響をえた。さらにはダウンタウンやブルックリンでゲリラ的にライヴを行った。

アメリカではすでに桜祭りや日本庭園ほか日本のイベントがあるごとに和太鼓のパフォーマンスが行われ、浸透しつつある。日本からやってくるプロ奏者らも話題を集め、アメリカで和太鼓を学んでいるセミプロの演奏もそれなりの評価をえているようだ。そんな中、野武士がどのように差別化を試みるのか聞いてみた。「正統派の和太鼓を演奏する人は、たくさんいます。自分たちは、太鼓を音楽といった路線だけでなく、もっといろいろな人に見てもらえるよう違った角度から表現しようと考えています。衣装もその一つ。武士の潔さにあこがれていることもあり、侍のような服装を選んでいます。演奏家というだけでなく、パフォーマー集団のような気持でいます。だから、どんなところでもゲリラ的なライヴを行うこともあるし、演奏できる場所があれば、どこへでも行くのです」

nobushi3パフォーマーというだけあって彼らは真剣な太鼓の演奏の合間に、太鼓のとりあいとなって転んだりといったドリフのコントのようなコメディーで会場を笑わせた。観客たちの緊張がほぐれ、メンバーに対する親しみが増す。コメディーが終わったと思えば、阿修羅の手が交差するように、太鼓をたたく腕がシンクロしていくといった美しい動きを見せる演奏も続いた。蜘蛛の糸に似せたテープがエンディングにパッと広がる様もユニーク。

演奏が終盤にむかうと観客たちも興奮と感動で静かに座っていることができず、全員が立ち上がった。汗にぬれたメンバーが演奏を終えピタリと動きをとめた後も、拍手喝采は鳴りやまなかった。ニューヨークの土俵でも彼らは白星をえたようだ。<敬称略 取材・執筆 弘恵ベイリー>

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