ヤバかった時代のイーストビレッジで起きたヤバい事件

今でこそイーストビレッジといえば、アベニューAでもBでも白人の若い兄ちゃんや姉ちゃんが
闊歩して、こ洒落たバーが立ち並び、日本のファッション雑誌でも「人気のレストラン」
なんてお題で紹介されたりしている。
が、私が渡米したばかりの1996年は、まだアベニューAから先は、アルファベットシティーと称され、危険なエリアだといわれていた。
Cなんてところまで行くと、ラテン系とブラックしかいない。もはやスパニッシュしか聞こえてこないエリアもあり、ここは本当にニューヨーク?って感じだった。

街の中心部には、髪の毛を青や緑や赤に染めて、トサカのように立てたパンクに狂ってる若者がいた。その上、わけもなく昼間かっらラリってる兄ちゃんはそこらじゅうにいたし、
茶色い紙袋に入れたビールをにぎりしめてる赤ら顔のオヤジ、そしてホームレスは、段ボール箱でそこいら中に寝ている。

若い家出娘が、太った腹をTシャツから見せながらピザやのゴミ箱をあさって、
ピザを食ってたりもする。

たまたま自転車でアベニューCあたりを通りかかったら、警官に捕まっている
ドラッグディーラーらしき黒人の男の子を見た。
よくアメリカアクション映画で刑事が犯人を捕らえるシーンに出てくるみたいに、
パトカーの上に両手をあてられ、身体検査をうけていた。

「うぉ~~~っ!これがリアルなニューヨークだぁ」とドキドキ興奮したものだった。

私は、そんなアベニューAと1アベニューにルームメイトのジローちゃんと
住んでいた。この住まいは、ジローちゃんがサッポロというミッドタウンにあるラーメン店に
「ルームメイト募集」の張り紙をしていたことから見つけた。

電話をかけてみたら、朝のニュースでキャスターをやってるような爽やかな声のジローちゃんが、
「いつでも部屋を見に来てください」と言うので、その足で向かった。

半地下にあり、ほとんど日中でも真っ暗なこの部屋。普通の女性だったら引いてるだろうけど、前に住んでいたールームメイトが描いたのだという真っ白な壁に黄色やブルー、オレンジで彩られたカラフルな色の的の絵と、赤い玄関のドアと赤いテーブル。

小汚いオレンジ色のラグも、なんだかビレッジらしいと感じた。

そして、CDラックを見ているうちにワクワクしてきた。
そこにはジャズやレゲエ、見たことないブラックのアーティストのドラム&ベースなどが
CDショップ?ってくらいに並んでいたのだ。

北島サブちゃんやチビでブスな女の演歌歌手のCDはさすがにここにはない。
これがニューヨークだぁ~~~と、踊りだしたい気分。

「ここに住む!決めた」と一言。
「本当にいいんですか?ベッドを縦に並べて寝ているSTUDIO(ワンルーム)ですよ。
プライベートな部屋はないし、バスタブもないし」
「OK」

すぐさま荷物を運び込みビールで乾杯したのだった。

ジロー君と暮らしはじめてからの私といえば、
毎日がワクワクのし通しだった。なんせ住みたいってだけでやってきたニューヨーク。
目的もなくフラフラしてるだけなのだ。そりゃー楽しいに決まってる。
学校に行くわけでもなく、働くわけでもないのだから。

日本のテレビ業界に勤めているからか、ジローちゃんは音楽やメディアに詳しく、
情報収集しなくてもサブカルチャー的な情報は彼から入ってくる。
それもまた好都合。

ところが、それから数週間後に、ヤバイエリアならではな事件が起こるのだった。

ある夜、午前2時近くまでジローちゃんと私、そしてロサンジェルスから来ていた
ジローちゃんの友人で日本語のできるタイ人のスーちゃん、
私がランゲージエクスチェンジで知り合ったブラックの兄さん。この4人のメンバーで
部屋で飲んでいた。

すると、いきなりドーンと、玄関で爆弾が落ちたみたいに大きな音がした。

「だめだよージローちゃん開けちゃー。危ないよ、何だかわかんないのにー。」
と叫ぶ私を無視して、恐れ知らずなジローちゃんが玄関を開けた。

「オヤジが死んでるー」とジローちゃん。
「えー死んでるわけないでしょー」と側に寄ってみると、
ブラックのオヤジが、玄関までの急な7段くらいの階段を頭からまっさかさまに突っ込み、
蚊の肺活量ほどの呼吸をしていた。

すぐさまジローちゃんは、「911(こちらの緊急連絡は911である)に電話しなきゃー」
と冷静に受話器を手にする。
私は「オヤジをこのまま置いておくと窒息しそうだから、皆で引き上げよう」と声をかけ、
ピクリとも動かないオヤジの身体を持ち上げた。

911が到着したのは、オヤジが冷たくなってからだった。
というのは冗談で、オヤジは生きていた。

救急隊員の兄ちゃん達は、オヤジをガッチリと固定してタンカに乗せると、
「首の骨が折れてたら大変だから、素人が動かしちゃだめだよ」と軽く注意。
さすが救急隊員はプロだななんて思っていると、ジローちゃんに事情聴取をはじめた。

まず名前を聞いて、
「日本人か?」と質問していた。ジローちゃんのラストネームがイトウだったので
「ジャッジ・イートォー(OJシンプソンのジャッジをやった)の親戚か?」と
ジョークをとばした。

「まーそんなとこだよ」とジローちゃんも相槌。そこから救急隊員は、
しばらく楽しそうに世間話をして、「じゃーまたなー」とオヤジを連れて去っていった。
日本の救急隊員みたく緊迫したムードは感じさせず、のんきである。

たまにゴジラの人形がついている消防車が、普通に街を走っていたりするから、
ニューヨークの救急隊員って、危険と隣り合わせの仕事中も遊び心は忘れないのだろう。

さて、事件の話に戻そう。

この後、一緒に飲んでいたブラックの兄さんは手にべっとりとついた血を見て、
悲鳴をあげ、バスルームに駆け込んだ。石鹸で何度も何度も手を洗っていたようだ。
万が一、妙な病気とかに感染したりすれば、たまったもんじゃない。

「飲みなおす?」とスーちゃんとブラックの兄さんに聞いたが、
すぐさま二人はオバケ屋敷から逃げ出すかのように部屋を出て行った。

そんなこんなで、まだまだこの地下の部屋にいる限り、
いろいろな事件が続くのであった。

そのお話は、また次回!

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