埋もれそうになっている映画を発掘・発見して陽の当たる場所へ!「ひろしま」を全米放映、英国やフランスにも配給。映画配給レップ(代理人)、自主映画人、伊地知徹生(Ijichi Tetsuki)さんvol.1

伊地知徹生さん(フィラデルフィアにて)  撮影:エリザベス・ウィルカーソン

伊地知徹生(いじち てつき)Ijichi Tetsuki
京都府出身 サンフランシスコ→サンタフェ→フィラデルフィア在住
レイン・トレイル・ピクチャーズ(RAINTRAIL PICTURES)CEO
タイドポイントピクチャーズ(TIDEPOINT PICTURES)CEO
日本映画を全世界にグローバル配給
上映、配信の推進、コーディネートなどと併行し、
自作監督短編映画「ランドロマット・オン・ザ・コーナー」を完成・現在映画祭に出品中
長編映画化を企画中
著書「自主映画人ガイド」出版準備中
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しゃけ:
映画配給レップ(代理人)というお仕事は「これは!」と思った映画の配給を著作権者に申し出て配給代行者として配給会社や映画館、配信会社などに売るというお仕事という理解でよろしいでしょうか?渡米した経緯から教えていただけると嬉しいです。

伊地知さん:
どこから話せばいいかな。まずは1996年に渡米しました。妻がアメリカ人なのでそれがきっかけですが、日本で長く映画に係わる仕事をしていたのでアメリカでも映画に係わりたいと、「タイドポイント・ピクチャーズ」を設立しました。その時はサンフランシスコに住んでいたんですけど。現地で見つけたドキュメンタリー映画を日本のテレビ局、NHKに売ったのが始まりです。そのころはアメリカのドキュメンタリーの需要があったので売れましたし、NHKの人とも渡米された際はお会いしたりしていました。

NHK ETVのドキュメンタリー番組“忘れられた被爆者たちの原爆映画「ひろしま」”で、NHKの取材を受ける伊地知
さん 撮影:エリザベス・ウィルカーソン

そのあと、ビデオ市場が下火になって今度は日本の映画を北米のみならず世界に売ろうと考えて、サンタフェから「レイン・トレイル・ピクチャーズ」を立ち上げました。海外、特に北米などで見られる日本映画というと、黒澤明、小津安二郎、溝口健二たちの作品ということになりがちなんですけど、それだけではもったいないし悔しくて。素晴らしい作品が映画会社の倉庫や個人宅で埋もれていたりするんです。そういう、まだ世界で陽の目をみていない作品に光を当てたく、忘れられそうになっている過去の映画をリマスターして残したいという思いですね。

しゃけ:
!!映画(お宝)発掘作業というか?!伊地知さんに見つけてもらったら世界につなげてもらえるなんて!!

伊地知さん:
飛行機に乗って世界中を駆け回ったりはしていないですよ。今はSNSで発掘しています。(笑)まずはメール1本から始まって。込み入った話はビデオチャットであとはやはりメールやメッセージのやりとりですね。現地に出むくことなく話が進められる時代になりました。

「ひろしま」という関川秀雄監督の映画はFacebookで偶然見つけて連絡を取ったのが始まりです。原爆が投下された直後を映像化した1953年公開の作品ですが、日本国内でしか見られていなかったのですね。これは世界に知ってもらうべきだと強く思いました。社会的な意義があるな、と。うまく交渉ができて、アメリカの大手テレビ局がリマスタリングの費用をカバー出来るライセンス料をだしてくれることになり、リマスター版で全米放映されました。それをきっかけに、イギリスや北米でビデオ権利が売れ、フランス版を作りたいという申し出もあったり、オーストラリアとニュージーランドでも配信契約が出来たので、それで英語圏は制覇したかなあ。今は、イタリアとアルゼンチンで交渉中です。

しゃけ:
まさに日本映画を世界につなぐ架け橋をされているのですね。

伊地知さん:
でも、ただ売り買いの営業や調整ということではなくて。大きな会社ではできないことをやりたいんですよね。今年(2021年)の夏にはニューヨークで林海象監督の「夢みるように眠りたい」の野外上映会をやりました。今、こういう日本映画をアメリカの劇場で上映するというのは難しいんですけど、映画ってやっぱり映画館で見たいじゃないですか。この映画はとくに劇場に合うんです。ニューヨークの「ジャパンカッツ」でもオンライン上映だったので、もったいないなあ、と。ブルックリンの小さな劇場に交渉したら共催してくれて、夜のマンハッタンの公立公園でモノクロのサイレント映画を上映することができました。こういうことは普通の海外セールスエージェントはやらないと思いますね。公園にたくさんの人が集まって大盛況でした。

NY マンハッタンの公立公園で野外上映の様子(2021年夏)

2018年製作の「NOISE」は、監督の要望に応えて、東海岸のブルックリンと西海岸のサンフランシスコで上映会をしました。配給や配信の前に劇場をやりたいという監督の希望を少しでも叶えてあげたかったのです。
他にも新進監督の作品も扱っています。宮崎大祐監督のモノクロスリラー「VIDEOPHOBIA」や舩橋淳監督の国際共同製作作品の「ポルトの恋人たち 時の記憶」のインターナショナ版も配給代行しています。

しゃけ:
モノクロ映画がお好きなんですか?一番好きな映画は?
ご自身の監督作品についても教えてください。

伊地知さん:
モノクロ映画・・・そう言われれば自然にそうなってるかもしれないですね。カラー作品を見すぎていると、よっぽどいい撮影ができていないともう驚かなくなっちゃったのかもしれません。こうなるだろうって予想がつくというか。モノクロ映画は自分の頭の中で自分の色が付けられるので、驚きが増すということはありますね。

自分が見たい映画を作りたいじゃないですか ”Laundromat on the Corner”を製作

3年ほど前にやっと自分が何を作りたいかっていうところにたどり着いて台本を書きました。そして、ついに「Laundromat on the Corner」という自作の短編が出来上がって映画祭に出しています。これはシノプシスがある3本の幽霊もの内の1本なので、是非長編化したいと思っていて、これも含めて残り2本をあと10年以内に出来たらいいなあと思っています。

やっぱり自分が見たい映画を作りたいじゃないですか。何が見たいかって、僕の場合はホラー映画にたどり着いたんですけどね。お化けとか幽霊。「LAUNDROMAT ON THE CORNER」は今僕が住んでいるフィラデルフィアのコインランドリーを舞台にしています。中国系女性の幽霊が白人男性に・・・というホラー映画です。
小さい頃からお化けに興味があったのかなあ、テレビにかじりついて見ていたという記憶はあります。ホラー映画っていってもキャーキャー叫ぶのではなくて、四谷怪談みたいなのが好きですね。例えば、好きな映画は1988年の大林宣彦監督の「異人たちとの夏」や2010年のマット・リーブス監督の「モーリス」辺りが好きかもしれないです。

自作映画監督としての伊地知さん 撮影現場にて

しゃけ:
映画中毒の伊地知さんの選んだ映画は「異人たちとの夏」なんですね。観てみます!そもそも映画に興味を持ったのはいつだったのですか?

伊地知さん:
これを話し始めたら夜が明けちゃうかも(笑)そもそもは映画ファンでも音楽ファンでもなんでもなかったです。かといってスポーツが得意なわけでもないし。ハンドボールはやっていましたけど、準レギュラー。レギュラーにはなれないで終わった。でもそのころ、ガールフレンドというのかな、好きな子からビートルズを教わりました。それでデートって言ったら映画?となって初めてみたのがチャーリーチャップリンの映画です。これに衝撃を受けたんだろうな。それまでは弁護士か先生になろうと思っていたんですが、「これからは映画だ!映像だ!メディアだ!」となりましたね。また、絵描きになろうかな、なんて思ったり。

京都じゃ見れる映画が知れているので、東京に行かなければ!と東京に行くことだけを考えて大学に行きました。大学卒業するのに5年かかったからその5年の間、一年に400本近く映画を観ていました。

しゃけ:
年間400本って・・・。お金を払って映画館でですか?

伊地知さん:
オールナイト映画は1500円で一晩で4本くらい見れましたね。新宿の蠍座、池袋の文芸坐、飯田橋の佳作座とか。あと、京橋にあった商業映画館では無い国立映画センターにも通っていました。ただ学生だから、もう映画以外には何もお金を使えなかったです。毎日卵かけご飯ですよ。(笑)

しゃけ:
京都から東京に出てきた映画ファンの青年が、どうやって映画の仕事についていくのかお聞きしたいです。が、長くなりそうですので今日はここまでということで、連載させていただいてよろしいでしょうか?

伊地知さん:
承知しました。よろしくお願いします。

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