目指すは、アメリカ人初の芥川賞受賞!
大分県でALT(外国語指導助手)をしながら日本語で小説を書いている、オドネル・ケビン(Kevin O’Donnell)さん
しゃけ:
日本に興味を持ったきっかけを教えてください。
ケビンさん:
生まれたのはカリフォルニア州、育ちはアメリカの雨首都であるシアトルです。
ここにも書いてあるのですが、 日本に興味を持ったのは13歳のとき、ソフトボールというバンドに出会ってからです。
日本語の響きが大好きなのだと思います。意味が分からなくても聴いていて気持ちいいです。
たぶん、意味が分からないからこそ、想像に任せることが出来て、こういう意味なのかなという膨らんだ想像によって、より美しく聞こえると思います。
日本語がわかるようになって、想像と本当の歌詞が重なりあったときに大きく感動します。
13歳の時は本とテープを買い、毎日布団に入ってから眠気に襲われるまでヘッドフォンをかけて勉強していました。
日本の音楽を聴きながら歌詞を読もうとしたこともたくさんありました。ほとんどは読めませんでしたが。(笑)
僕が日本の音楽に出会った頃ニキビがひどくて、毎日ヘッドギアという、歯だけではなく頭全体につける矯正器具を着けていました。
それほどいじめられた訳じゃないけれど、自信というものを全く知りませんでした。それで悲しかったです。
でも、日本の音楽に出会うことによって、想像が膨らんでいき、自由になったんです。日本はこういうところなのかな、と。日本できっとこういうことをするのだろう、と。
こんな風に、「なりたい自分になり、それまでの自分を知っている人が一人もいないところに行く」という空想に毎日耽りました。
これは日本の音楽が僕にくださった「光」だったのです。
学校の勉強が忙しくなったため日本語の勉強は一時休憩し、大学二年生の時にまた一年間基礎勉強。
大学三年生の間は交換留学生になりました。
初来日は2006年の真夏。シアトルと打って変わっての蒸し暑さに大変驚きました。
動物園の熱帯雨林ゾーン以外の所であのような空気が存在するとは、少し感動しました。
自信を持って日本を話せるようになるのに7、8ヶ月間はかかったと思います。
大学を卒業し社会人として日本に戻ったら、二年間で日本語能力試験一級に受かりました。
とはいえ、まだ分からない単語が多々ありますし、こういうメールを書く時にでも、常に「この文法、合っているかな?この文、可笑しくないのかな?」と考えています。作品を書く時には「文章モード」に入り、文法などを殆ど考えずに書いています。
しゃけ:
「雑文集」と「マヨネーズ」を読ませていただきました。面白かったです。
ケビンさん:
実は、大学四年生の時まで、僕は読書がかなり嫌いだったのです。
何故かというと、読書イコール古典・・・フィッツジェラルドやヘミングウェイ(日本で言えば三島由起夫かな?)という、深刻なテーマや難しい言葉に満ちた、とても堅いイメージがあったからです。
留学中に読解の勉強として村上春樹の「国境の南、太陽の西」を読ませて頂いたのですが、個人的にはあまり楽しめませんでした。
が、大学四年生の時、日本の近代文学の授業で金原ひとみの「ミンク」という短編小説に出会い、本に対する考え方が一瞬にしてがらっと変わりました。
文体もさることながら、内容が最高に面白いです。主人公の想像や独り言など、あのような描写を本の中で見るのは初めてだった。言うまでもなく、相当感動しました。
そうだ。小説は面白くていいいんだ!と初めて思いました。
「小説は美しくあるべき」という、僕の中にあった堅いイメージを、金原ひとみが壊してくれました。金原ひとみの「憂鬱たち」は僕の宝物です。
また、彼女ができたことは勉強に対する考え方をさらに強化しました。彼女は僕よりもずっと頭のいいもの凄く真面目な人で、デートはいつも博物館に行ったりドキュメンタリー映画を観に行ったりしていました。この人といると自分がより良い、より真面目な人間になるのではないかと強く感じました。実際彼女と付き合ってから僕はより真面目になり、彼女のおかげで、初めての執筆に挑戦することになったのでした。
しゃけ:
勉強が嫌になることはないのですか?
ケビンさん:
日本語の勉強が嫌になったことは一度もありません。
勉強というより執筆が大好きなので、飽きることはあまりないです。
勉強したくない時はありますが、それは嫌だからではなく、違うことをやりたいからだけです。ピアノとか。
ピアノは中学一年の時から高校二年の時まで習っていました。
全然うまくないんですが、大好きなので、学校の音楽室でよく弾いたりしています。
特にショパンが好きです。いつか「ポロネーズ」が弾けるようになりたいです。
最近はビデオ編集なども好きなので、もっと時間が欲しいなという時がたくさんあります。
しゃけ:
ALTとして中学校で英語を教えることは楽しいですか?
ケビンさん:
大変楽しいです。ただし、英語が全くできない英語の先生がかなりいて困っています。(苦笑)
勉強に一番大事なのは情熱ですね、間違いなく。
いくら勉強しても情熱がなければ次々と忘れていくと思います。
ですから楽しい学習法が一番大切だと思います。文法ばっかりだとすぐ退屈になって興味を失ってしまうと思います。
アメリカの映画やドラマをたくさん見た方が面白いし、本当の英語の練習にもなると思います。
しゃけ:
日本はどんな国ですか?
ケビンさん:
日本に来る前の想像と違ったところは・・・
・スーパーの蛍光灯。(『雑文集』の「僕は日本が大好きですが」という文章で意見を細かく述べさせて頂きました)
・とても綺麗な女性が想像以上に多くいること。
・気の強い女性が想像以上に多くいること。
・夏の暑さ。(湿気)
・豚骨ラーメンの美味しさ。(生まれて初めて食べ物に対して感動)
日本に来て驚いたことは・・・
・幽霊を本気で信じる人がかなりいるところ。
・GTOのアニメとGTOのドラマの「品質の差」。
・従兄弟と一緒にUSJに行った時、ジェットコースターを待っている間、後ろの人がずっと僕たちのことを話していたこと。
「いや、あたしやっぱもうちょっと背の高い人が好き。」「マジで?でも髪の色良くねぇ?」
・必死に部活に励んでいる生徒の姿。最高にかっこいいです。
・男性の髪型ーー初めてギャル男を見たのを、今でもはっきり覚えています。
・お客様に対する「丁寧」さ。一方で、「店で食べますか?」という、敬語が分からないであろう外国人のための挨拶。
・豚骨ラーメンの美味しさ。(2回書いておくべきだと思います)
日本の好きなところは・・・
・毎年夏が必ず終わること。
・安全なところ。
・豚骨ラーメンがあるところ。(3回目ですが書くべきだと思います)
・夏が終わって秋が来ると、多くの女性が黒いピーコートを羽織るところ。
・みなとみらい
・大桟橋
・鎌倉
・秋が終わって冬がが来ると、多くの女性が白いマフラーををするところ。
・椎名林檎
・THE BACK HORN
・MASS OF THE FERMENTING DREGS
・SOFTBALL
・日本にもマクドナルドがあるところ。
・寿司
・お好み焼き
・焼きそば
・「いらっしゃいませ」の言い方で、店の良さが大体想像できるところ。
・冬が終わって春になると、女性が半年をかけて少しずつ服を脱いでいくところ。
嫌いなところは・・・
・毎年夏が必ず来ること。
・ジャニーズ
・日本にもマクドナルドがあるところ。
・ジャニーズ Jr.
【関連リンク】