NY高層アパート23階のお部屋でネコちゃん2匹と自由に暮らす!翻訳一筋25年・翻訳会社経営 松尾菊さんにインタビュー
—NYアパート契約事情—
私はNYでアパートを借りるのがそれほど大変とはアパート探しを始めるまで知りませんでした。まずは高くて驚きました。
昨今の東京の相場が私は分からないのですが、東京なみでしょうか。NYの住居事情は無知に等しかったので、
賃貸しアパート専門のブローカーに手ごろな物件をリストアップしてもらいました。
その時に私が最初に出した条件が「絶対に静かで左右上下のアパートからの音が絶対に聞こえないこと」でした。
よく映画やドラマに出てくる、Brown Stone(レンガと石作りのアパート)が素敵だとブローカーに言ったら、
ああいうアパートはたいてい戦前に建てられたもので、板張りで防音がなっていなくて絶対音が聞こえるから不向きと言われてあきらめました。
あとマンハッタンは道路の車の雑音がひどいから、静かな環境が必要なら道路よりもかなり上の方が良いだろうというアドバイスでした。
というわけでバッテリーパークシティというマンハッタンの再南端にあるかなり静かな地域の新築高層アパートの23階に住んでいます。
借りるにあたって、サンフランシスコあたりだと敷金と最初と月の家賃を払って、アパートによってはクレジットレポート(信用調査書)を出す程度で良いのですが、NYできちんとしたアパートに住むにはそれに加えて以下の書類一式を用意しなければなりません。
* Letter from your employer stating position, salary and length of employment. (or start date if you have not yet begun working)
* Last two (2) pay stubs (if already working)
* Last two (2) years tax returns
* Last two (2) months bank statements
* Name, addresses, and phone numbers of previous landlords
* Two personal reference letters
* Two business reference letters
* Verification of other assets such as real estate, securities, etc.
* Photo identification
(初めてアメリカに住む日本人だと、おそらく代わりの同等の書類を出すことになるのではないかと思います。)
あと大変なのは借りるアパートの毎月の家賃の40~50倍の年収があることを証明しなければならないことです。
例えば1ヶ月3000ドルのアパートを借りるとしたら、最低12万ドルの年収があることを証明しなければなりません。
私の知人の娘さんでどうしてもNYに住みたくてNYのデザイン会社で働いているけれど給料が安いので
親が保証人になってアパートを借りている若いアメリカ人がいます。
このように親が保証人になる場合は、親の収入が家賃の80~100倍あることが条件です。
どうしてこれほど大変なのか分からないのですが、一説によればNY市の法律は間借り人の方に有利なのでいったん借りられるとなかなか追い出せないので
借 りるときの審査が厳重になっているということです。ほんとに、「借りてほしくない」って言っているみたいです。NYは景気がいまだに悪くて空室が沢山ある ので、だいぶアパートの家賃は下がっていると言われますが、それでも高いです。「家賃のために働いているみたいなものです」という人もいます。
—サンフランシスコとニューヨークのちがいは?—
しゃけ:
サンフランシスコもかなり人気の高い町ですよね。
菊さん:
はい、サンフランシスコは素晴らしい町です。私はだんだんニューヨークが大好きになっていますが、
気持ちの80%位は今でもサンフランシスコが本拠のような気がしています。
サンフランシスコは美しい自然に囲まれ、寒暖の差が少ない温暖な気候なのでとても快適です。町中がおしゃれで、美味しいレストランも沢山あります。
日本食料品も豊富で、日系スーパーには新鮮な魚が築地から飛んでくる日がありますし、本格的な地元のお豆腐屋さんもあって日本人にとって住みやすいです。
しゃけ:
NYの良いところはどんなところですか?
菊さん:
私はまだNYは新米で東西の違いを本当に把握しているのかどうか分かりませんが、ビジネスの世界の真っ只中に居る友達に言わせるとNYは西と比較すると、
とにかくスキが許されない激しい競争の世界のようです。でも私はNYへ来て人間がとてもフレンドリーなのでびっくりしています。
あとNYでは自分の気持ちを率直に表現する人が多いようにも感じます。
レストランや商店のサービスも概ね西と比較すると質が高くて、行き届いているように思います。
競争が激しいので良いサービスを提供しないと生き残れないからかもしれません。
NYへ来ていちばん驚いたことは日本人コミュニティの大きいこと。そして日本人同士が助け合っていることです。
私はサンフランシスコ近辺ではあまり日本人コミュニティに参加していなかったのですが、こちらでは積極的に日本の方達に会う機会を作っています。
素晴らしい仕事や活動をしている日本人が沢山います。特に仕事に頑張っている威勢の良い日本人女性が多いのには圧倒されています。
なんだかNYへ来て日本の良さを再発見しているような気がします。
あとこれは特に強く感じているのですが、NYに居る日本人は、本当にNYへ来たくて来てしまった、
そしNYが好きで何年も居ついてしまったという人が多いようだということです。
西海岸側にももちろんそういう人も沢山いるのですが、企業の海外派遣とか結婚が理由で渡米・滞米されている方が結構多かったように思います。
しゃけ:
菊さんも日本の生活に不満があったわけではないけど、飛び出してみたのですよね?飛び出してみてよかった、と一番実感するのはどんな瞬間ですか?
菊さん:
はい日本の生活に不満はなかったし、私はどちらかというと「住めば都」的な性質です。
でも、せっかく一度だけの人生なので後悔しないようやりたいことはやっておこうといつも思っています。
今回SFが大好きだったのにNYへ引っ越したのも、NYへ行ったら後悔するかもしれないけれど、行かなかったらもっと後悔するかもしれない、
「同じ後悔をするなら、やって後悔したほうが良い」という感じです。やって後悔しなければ、それに越したことはありませんし(笑)。
20年以上過ぎた今でも日常的に飛び出してよかったと実感しているので、一番実感するときと聞かれても困ってしまいます(笑)。
こうしてアメリカで自由気ままに生活し、自分の好きな仕事をしているというのは、自分の力だけでできたことではなく、
素晴らしい人達とのラッキーな偶然の出会いのおかげだと思います。と同時に、その偶然の出会いを見つけることができた自分自身にも感謝しています。
自分からしっかりと手を伸ばせば、必ず誰かが握り返してくれると思います。
手を伸ばさずに待っているだけでは駄目ですし、手の伸ばし方も他力本願的な伸ばし方では駄目ですが、しっかり伸ばせば絶対に何かに届きます。
今私はNYでの出発として、手を伸ばしているところです。
若い頃と少し違うのは、翻訳者としての基礎と経験、そして自信があることです。
でもうぬぼれないで、いつも初心にかえってしっかりと手を伸ばそうと思います。
正直に言って何のコネもツテもなく飛び込んできた町なのでものすごく不安はあります。
でも25年間なんとかやってきたのですから、きっとこれからもやって行けると思います。
<菊さんとスプーンちゃん(10歳・生後2~3ヶ月の頃に道で蚤だらけになっているところを菊さんに拾われる)・オリくん(アニマルシェルター出身・8歳)>
[…] <パート2へつづく> Share this:共有FacebookTwitterLinkedInLike this:Like一番乗りで「Like」しませんか。 […]