
「ブロードウェイみたいなものですから。」
ブルックリン、グリーンポイントにある公園のカフェで抹茶ラテを飲みながらそう語る Chef Yuu。いつものように爽やかな笑顔だが、彼の目には今までなかった緊張感が漂う。Chef Yuu との出会いは4年前、ミッドタウンにあるレストラン ”Mifune” で Executive Chef を勤めていた彼をNY1Pageの記事で取り上げたのがきっかけだった。いつかは自分でレストランを開いてフレンチで三つ星を取りたい、夢をみる少年のような顔でそう言っていたことを鮮明に覚えている。その当時はまだ夢でしかなかったが、今それが現実に近づいている。

公園ほど近くに立つレンガの空きビル。 その裏口で Chef Yuu は私を待っていた。外壁がグラフィティに覆われ、どことなく殺伐としている。ここは彼のオープンする高級フレンチレストラン’Yuu” の店舗。まだ工事中の店内に足を踏み入れると、中では二人の作業員がお昼休憩をとっていた。贅沢なくらい広々としたスペースは建築材料と工具に埋もれていて、レストランの雰囲気はまだ1ミリもない。「ここにはソファーを置いて待合室にするんです。」埃だらけのスペースを歩きながら、隅から隅まで細かくデザインを説明する Chef Yuu。彼の頭の中にははっきりとした構図が描かれているのだろう。美味しい食事を出すのは当然。食事をしている2時間ばかりの間、現実から離れた贅沢な空間でとっておきの経験を提供する。お客さんがお店に足を踏み入れたら開幕、そして最高の料理とサービスでお客さんを最後までテンターテインする。それが Chef Yuu がプロデュースするブロードウェイ。

プロデューサーとしてまずやらなければならいのは資金集め。ニューヨークでレストランを開くには相当な費用がかかる。まして “Yuu” は高級フレンチ。立地も内装もそれなりでなければならない。厨房ではベテランでもビジネス面ではほぼ未経験、右も左もわからないまま投資家を探す。初めて開く店で場所は海外、しかもニューヨークというレストラン激戦区。そこに出資をするのは相当なギャンブルだ。そんな店に賭けてくれる人は見つかるのか。しかもお金を出してくれれば誰でも良いというわけにはいかない。Chef Yuu には鮮明なビジョンがある。そのビジョンを分かち合い、一緒にレストランを支えてくれる人でなければならない。


そして投資家を見つけるのと同じくらい難しいのがニューヨークでの店舗探し。立地が良いともちろん家賃もそれなり。オーナーとの折り合いがつかず話が途中で立ち消えになることもザラにある。”Yuu” のオープンするグリーンポイントはおしゃれなカフェやバーが立ち並び、マンハッタンからの便も良く最近人気のスポット。そんなエリア、しかも公園の目の前という好立地に、窓の大きく開放感のある広いスペースを見つけ、そのスペースを賄えるだけの資金が集められたというのには正直驚いた。「ラッキーだったんですよ。運ってありますから。」もちろん運やタイミングというものはある。しかし、それだけではここまでは来れない。Chef Yuu の人を集める力、そして彼の人となり、それが二つの高いハードルを超えることを可能にしたのだろう。




全てを何事もなかったかのようにサラッと話す Chef Yuu。だか、ここまで来るのには相当な苦労があった。店舗を見つけてからリースにサインするまでに1年費やした。工事が始まったが全てがスムーズに行くことはなく、何かと頭を悩ませる日々はまだ続く。しかし、立ち止まっている時間は無い。目指すは4月オープン。Chef Yuu と厨房で一緒に演じる華麗なキャストを揃えて開幕に立ち向かう。この豪華キャストについてはまた次回語ることにしよう。乞うご期待。
-e, Instagram: @e_villagestone

Chef Yuu Shimano Instagram: @yuushimano
Restaurant Yuu Instagram: @Restaurant_Yuunyc