アメリカでブロードウェイ出演を目指し、ニューヨークの舞台で女優として活躍中の大野有梨香は、パワーがあふれていて明るい。「今は、日本人やアジア系として配役が多いのですが、このままいろいろな役を演じていれば、必ず自分にあてはまる役がくるって信じています。人生経験が増えると、役者の味もでてきますし。
アメリカの舞台で良いところは、移民が多い国だからこそマイノリティーにもチャンスがあるし、受け入れてくれるところです。それに、私より年上の人が舞台の関係者には多いですし、逆に若いから芝居ができないという先入観もありません。年齢に関係なくチャンスを与えてもらえるのです」
オーディションにて選考され、舞台、映画にCMと、さまざまな分野で出演を果たしている。パワーあふれる彼女だからこそチャンスをつかみ、オーディションに生き残っていくことのできる秘訣があるようだ。
小学校は、祖父が中国人でありクォーターだったため中華系の学校へ通った。そのおかげで中国語もできるため、アメリカでは中国人としての役もまわってくるという。中学生のころから演劇部に入り、それから大学を卒業するまでは演劇に没頭した。
「日本でも少し役者をやっていましたが、生きていくための本業とする勇気がなくて、大学を卒業してから、芸術センターで事務の仕事につきました。演劇をあきらめ切れずにいた場所だったこともあってか、演劇にふれることも多かったため、やはり自分のやるべきことは役者なのだって。意を決して役者にチャレンジしてみようって思って、どうせやるなら英語でやろうって思ったので、ニューヨークに渡りました」
2012年夏からNYにある演劇学校、サークル・イン・ザ・スクエア・シアタースクール、HBスタジオで2年間、演劇のメソッドを学んだ。「アメリカ人はハイエナジー(精力的)なので、私のように日本人気質で大人しいとついていけなくて、自分を出せないことがあるのですが、それでも基本的にはアメリカ人のように言いたいことを言うのは大事って思っています」自己表現の大切さが重要視されるアメリカで、子供のころから鍛錬されているアメリカ人と対等にやっていくのは大変だ。
「セリフを覚えるときに、何度も何度もセリフを繰り返し練習したりしていましたが、それをやってたらダメなのだって最近気づきました。もちろん役者として慣れてきたこともあるのですが、セリフを気にしすぎると自己表現がうまくいかないのです。自分らしさを出すためには、セリフよりもどうその言葉を自分らしく表現するか、演じるのかが大切なのです」
そもそも、英語はどうやって学んだのだろう?「英語をはじめたのは、普通に中学校で習う英語でしたが、それからは英語が好きだったので、大学は大阪外国語大学に行きました。大学時代に交換留学で1年だけオーストラリアに留学したことで、英語になれてきました。まだ日本には演劇を教える学校のない時代だったのですが、留学先に演劇科があったので、演劇のクラスをとりました。みんな学生なのに、演技がうまくてショックでした」
「オーディションに勝つための本があるんですが、オーディションって落ちるほうが多いので、オーディションに落ちたとしても気にしないことが大切なのです。選ぶ側も、役そのものを見るばかりではありません。たとえば、役柄の身長で選ばれることもあります。あと、まれでしょうが、監督の嫌いな人と顔が似てるっていうだけで落とされることもあるそうです。
選考の結果は気にせず、自分が『よし、できた!』って思えれば、それでいいんです。その場その場でベストを尽くし、諦めずに続けていくしかありません。役を得た後も、舞台はチームなので、人間同士、信頼しあうことが一番大切です。それはどんな仕事でも同じですが、コミュニケーションやチームプレイが大切なので、それを楽しめたら一番いいと思います」
「今までは、嫌いではないのですが、パニックになる役など感情表現の激しい役が多かったので、自分らしさを出せる役で、役者として認めてもらえる日がくることを願っています。舞台のメッカNYで役者を続け、ブロードウェイに出れることを目標にしています」オーディションでの失敗を恐れず、役者としての経験を重ねることでパワーアップしていくばかり。ブロードウェイに出る日は、直ぐそこだと予感した。<敬称略 取材・執筆 ベイリー弘恵>
【プロフィール】
大野有梨香(おおのゆりか)
女優、兵庫県神戸市出身。
2012年に渡米、Circle in the Square Theatre School, HBスタジオを経てニューヨークで活躍中。舞台はミュージカルからストレート、ドラマからコメディと幅広い。ブルックリンにあるThe Brick Theaterでの”The Adventures of Minami” ではタイトルで主役のアンドロイド役ミナミを演じ好評を得る。他にもマンハッタンのオフブロードウェイ劇場Ensemble Studio Theatre, Players Theatre、スタテン島のSundog Theatreなどで新作、話題作に出演し注目を得る。アジア人、日本人というステレオタイプにとらわれない役者を目指す。
【関連URL】
●大野有梨香オフィシャルサイト