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第二十一号 01/16/2000
Harlem日記
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******有名人*******
東京にいた頃から、田代まさしとグレート義太夫という有名人しか実物を見たことのない私はNYにいてもやっぱり有名人にめぐり会わない。
ディンゼル・ワシントンはNYにちょこちょこ遊びに来てるらしく、ロバートデニーロが経営する日本料理レストラン「のぶ」に出現するそうである。
彼が一人でネルズというクラブからリモに乗って帰る姿を見た友人は、”私も乗せてってー”と叫びそうになったらしい。
あれほど「ディンゼルってさーたいしたことないじゃん。」と言ってたくせに、この変わりよう。「やっぱり本物ってサーかっこいいんだよー。」と目をハートにしていた。
ネルズにはマイクタイソンもちょこちょこやって来て、暴れて帰るので、あまり好ましくない客なのだそうだ。
オノヨーコさんが日系レストランで飯食ってるなんていうのもあり得ない。本当にダコタハウスに住んでいるのだろうか?
そういえば、この間、リキという居酒屋に会社の同僚といっていたら、「スローなブギにしてくれ」By片岡義男の小説から抜け出たような、きれいなお姉さんがいた。小説に描かれるような女性というのは本当に存在するのだと驚かされた。
しなやかな身のこなし、透き通るような肌、タバコの煙の吐き方も斜め45度上向。その全てが絵になっている。
帰り際にどうしても気になって彼女と同席していた女性に話しかけた。
「失礼ですけど、ちょっと聞いてもいいですか?」
「ええ、まあ…」
彼女は怪訝そうに私を見た。
「どういったご関係のお仕事をなさっているのですか?」
「TVプロダクションです。」
「えーそうなんですかー。じゃああちらにいる女性は?」
「彼女はアナウンサーです。」
そうかーやっぱり。。。素人っぽくはないと思ったが、そうかーやっぱり。。。
だからどうした!と言われてもしょうがないが、やっぱりそうだった。この時、素人ではないと見抜いた自分の洞察力に満足していた。
イーストビレッジに住んでいた頃の話だが、
「くぼたとしのぶを知ってるか?僕の友人が、彼のライターをやっていて。。。」と得意気に話していたハーレム在住(日本に住んだことのある)の黒人兄ちゃんが、ある日、
「君たちも久保田に会いたいか?」と聞いてきた。日系のTVプロダクションに勤めるルームメートと私は、
「うーんそうだねー、また今度の機会にする。」とやんわりと断った。
私達が会いにいったとしても、「You are mine.」を熱唱してくれるわけでもないし。ソーセージを焼いてくれるわけでもない。
黒人兄ちゃんは、はしゃぎながら、
「久保田が、今日電話してきたらしくて、僕の留守電にメッセージを残してるんだ。宝物にしなくっちゃ。」
ミーハーなのだった。
「彼がハーレムに一人で来たいっていったけど、危ないからやめろって言ったんだ。自分がどれほど有名人なのか知らないんだねー。」
更に続くルンルンと楽しそうな彼が、うっとおしくなってきた。
「連れて来い!久保田をハーレムに連れてきて、何人の黒人の兄ちゃんが久保田を知っとるんか顔みせてみらんかい。」
彼の首ねっこをつかんで、頭をがくがくと揺すりたい衝動にかられながら、
「そうねー私も一度は、本物見てみたいなー。」などと微笑んでみせた。
日本のアーティストを、一般のハーレム在住の兄ちゃんが知ってるはずない。宇多田ヒカルさんだってハーレムに来たら、ただの日本人女性としてナンパの対象にしかなり得ないのである。
おしまい
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作者より、
文章中に多少、乱暴な表現があったことをお詫びします。
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—ハーレム日記へ感想を寄せていただいた方の中から抜粋してメールを掲載さ
せていただきます。今回はその一回目(ご本人には承諾済みです)—
こんにちは。はじめまして。
メールマガジン、いつも楽しく拝見してます。
私は今年しばらくNYに行きたいと思っている、日常にちょっと疲れたOLです。
NYに行けば東京で得られない何かがあるとは思わないのだけど、
それでも私を惹いて止まない場所ですね。
どうしても一度住んでみたいところなのです。
でも本当は、何の目的もなく行くのはどうなの?と、誰にともなく
罪悪感を感じていたのですが、
マガジンを読むたびになんだか自分を肯定できるような、
縛られた考え方を解くことができるような、そんな気持ちになります。
マガジンから伝わってくるNYがとても等身大だからかもしれません。
そうだよ、甘くないよな―と諭されながらも、なんだか勇気も与えられる感じです。
とにかくなんだか感謝している気持ちを伝えたくてメールしました。
これからもがんばってくださいね。
マガジン、楽しみにしてます。
それでは・・・。