被爆した父に代わって苦しみを描く

 

画像は京都民報WEBより拝借

画家、ニューヨーク日本人美術家協会創設者

飯塚 国雄

代表作は、長崎の原爆資料館に常設されている『炎』。まさしく炎の中で苦しむ人々の凄まじい姿が描かれている。彼はこれまで原爆、難民、飢餓、戦争、社会問題における弱者や、被害者の苦悩を訴えてきた。

「ピカソのゲルニカに象徴されるように、
プロパガンダだけでなく芸術的にも訴える作品であるよう、手を抜かない」

□■□

戦火をくぐりぬけた逗子。眼科医だった母に女手一つで育てられた。アメリカに渡って芸術を学びたいと米軍基地などでツテをたどり、1961年にロサンゼルスに行くチャンスをつかむ。母はがんに侵され余命一年と宣告されていたが、「チャンスを逃さないで」と息子を送り出した。それが飯塚の目に映る母の最後の姿となった。

親から仕送りをもらう今時の学生とは違い、自力で生活しなければならなかった。ウエイター、似顔絵描き、映画館のもぎり、レストランの皿洗いなどあらゆることをして、生活と芸術のために働いた。苦学する中で、彫刻家へと転身していく。

ニューヨークに移り、透明の支柱の中にネジや歯車が溶け込んでいるようなプラスチック素材の彫刻を手がけるようになる。70年代初めには斬新なアイデアで、作品は徐々に認められていく。アート・ステューデント・リーグの彫刻学科に講師として招かれたことで、永住権も取得した。ワーナー・ブラザーズが近代美術館で記念展示会を行った際には、シンボルマークとして飯塚の作品が入口に展示された。

そんなある日、弁護士からこんなことを言われる。「永住権を取得したからにはアメリカの半市民。第二次世界大戦中、日本人がどういう目にあったか知っているだろう?この先アーティストにもどんなことが起ころうとも知れないよ」と。

35歳の時、ニューヨーク日本人美術家協会を立ち上げたのは、その言葉がきっかけだった。中には「売名行為だ」と批判する者もいたが、熱心な呼びかけでニューヨークを拠点に活躍するアーティストが10人以上集まってくれた。
作品も認められ、美術家協会も軌道に乗ると暮らしも落ちついた。そのころには、母の死から10年がたっていた。家族をつれて墓参りのために一時帰国したのが、ある意味で転機となる。

別れて暮らしてきた父が生きていることが分かり、孫に会わせたい一心で長男をつれて父の故郷長崎へ。そこで父が原爆の二次被爆者であることを知る。定期的に白血球検査を欠かさず、原爆症発病に脅かされる生活を強いられていた。原爆資料館を訪れ、原爆の悲惨さに衝撃を受けた。

数年後、再び長崎を訪ねると父は「お前はいつまでアメリカにいるんだ?」と聞いた。被爆者にとってアメリカは憎しみを捨てきれない敵国。どう答えてよいものか分からず「分からない」と一言返した。同年、59歳という若さで父はこの世を去った。

「いつまでアメリカにいるんだ?
という父の言葉が耳に残り、トラウマになりました。自分は父の憎んでいたアメリカに住むアーティストとして、このままでいいのだろうか?」

10年以上その葛藤と闘い、ある日ついにキャンバスに向かった。被爆者の叫びを、父に代わって、社会の弱者の立場に立って世界に訴えていこうと、「社会派画家」という道を選択したのだ。弱者の訴えを“敵地”で行うことは容易いことではない、97年「我々はどこへ向かうのか」というテーマで、国連で被爆を訴える作品を展示した際には、反対派からの危害が及ぶことも期して遺書さえもしたためた。

「命がけでした」

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戦後50年以上たった今も、戦火は地球上から消滅していない。だが、これからは苦悩ばかりを訴えるのではなく、並行して希望や世界平和の願いを込めて、子どもや動物を描いた温かい作品も生みだしていきたい。赤と黒、白など限られた色を使って、オリエンタルな雰囲気の「人間曼荼羅」という連作を作り続けている。=敬称略(弘恵・ベイリー)

【プロフィール】
いいづかくにお
東京出身。逗子開成高校卒業後、お茶の水美術学院に学ぶ。1961年ロサンゼルスの美術学校に入学。3年後ニューヨークのアート・ステューデント・リーグ彫刻学校(学科?)でプラスチック彫刻を教える。73年ニューヨーク日本人美術家協会を創立、初代会長となる。95年国連で原爆連作の個展。うち一枚は長崎国際文化会館(原爆資料館)に寄贈、永久保存されている。社会派画家である一方で、宮沢賢治の童話の世界をテーマに、2003年から10点の連作を手がける。

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