■ハーレムのゴスペルが救ってくれた■
TiAがゴスペルに出会ったのは2016年だったが、同年に日本人女性3人で「おむすびシスターズ」を結成し、アメリカ東海岸最大級のマクドナルド・ゴスペルフェストで2万人の応募の中からファイナリストとなり、日本人としてグループ枠で初優勝をかざった。今年もソロとグループの両部門で1万人の中からファイナリストに選ばれたという実力派シンガーである。
「ハーレムに住んでいたので、街を歩けばところどころから、そして家の隣からもゴスペルは聴こえてきていました。その歌声は、まるで映画の世界に入ったみたいって思って、カべに耳をあてて聞いたりもしました。ゴスペルは宗教音楽なので、宗教に関わりのない私がそこへ行って歌うのは失礼だと思ったこともあったからか、行ったことはありませんでした。ある時、自分が可愛がっていた愛犬が亡くなったことを日本にいる母から聞いて、立ち直れなくなっていたんです。なんとなく教会へ足が向き、そこでゴスペルに心を救われました」
日本では2004年にテレビアニメ「Naruto」のエンディングテーマ「流星」を歌ったことでシンガーソングライターとして注目され始めていた。メジャーなテレビ番組のエンディング・テーマに音楽を起用してもらったりと、所属事務所からも期待をかけられていたが、鳴かず飛ばず状態が続いていった。
「デビューが簡単にできてしまい、16歳と若かったからかプロの世界に入ったという感覚がありませんでした。それでも途中から思い直して、実兄と新しく事務所を立ち上げ、別のレコードレーベルからもアルバムを出して、売れるためにと自分をつくってアイドルっぽいことをやってみたりもしました。そんな試行錯誤を繰り返していくうちに、歌が楽しいという思いすら失ってしまったんです。日本にいて30歳に近づいてくると、夢とか言ってるのも恥ずかしくて」もう歌はやめようという覚悟でニューヨークへ渡ってきたという。
ところがニューヨークは街を歩けば音楽であふれていた。1ヶ月後には、そろそろ音楽にふれてみようと、ビレッジ・アンダーグラウンドというオープン・マイク(観客が飛び込みで参加できるステージ)に行ってみた。そこで有名なミュージシャンや一般の人たちの歌に感動する。
「ここで自分がR&Bを歌ったときにあびた歓声はとても温かくて、この街でなら歌いたいって思ったんです。歌手ではなく、ただ歌が好きだったころの自分にもどることができました。そこからは、名前を売るために毎日いろいろな所へ歌いに行きました。ちょっとした小さなバーに行っても、ものすごい経歴をもつレジェンドがたくさんいるんです。歌うチャンスやスカウトのチャンスもたくさんありました。オープンマイクではなくショーケースに呼んでもらえるようになっていったことが当時は嬉しかったですね」
オープンマイクでステージに立つ一方で、TiAはさまざまな歌のコンテストに出ている。マイケルジャクソンも歌ったというハーレムにあるアポロシアターのアマチュアナイトで準優勝を獲得したのもその一つ。アマチュアナイトは観客も審査員であり、今一つなパフォーマンスだと観客たちがブーイングをはじめ、途中でパフォーマーは演奏をやめて退場させられるという。
「アポロには4回出てますが、退場させられたこともあって、泣いて落ち込んだこともありました。今思えば、それもいろいろな挑戦を続けていくための強さとなるいい経験でした。日本にいる時は人と競うことって好きではなかったのですが、この街に住んでいると、コンテストに出て、勝ち進んでやるぞっていうポジティヴな気持ちがわいてくるんです。きっと、この街の人たちにとっても同じだと思うのですが、コンテストというのは、勝ち負けを決める場所ではなく、挑戦を続けることのできる場所なのです。日本では、大人になると、いろいろなリスクを考えたりして、挑戦をやめてしまったり、自分で限界を決めてしまいがちですが、ニューヨークでは、いくつになっても挑戦を続けていくことができます」
TiAが、これから歌手を目指している若い子たちに伝えたいのは、ニューヨークにはチャンスがたくさん転がっていて、そこへ行くか行かないか、自分がまずは行動するかしないかで、チャンスをつかめるかどうかが決まるということ。たとえ失敗したとしても、それは自分らしさへの経験値として積まれていくのだということ。
■アニメもゴスペルもR&Bも全てが自分らしさ■
ニューヨークへ来たばかりのころは、本格的なR&Bのシンガーを目指していたため、アニメソングを歌ってきた過去を封印してきた。しかし、様々なコンテストを勝ち抜き自信がついた今は、日本を伝えることも、アメリカでは特別な事だと思うようになった。
「ニューヨークに来てからは、自分自身が心地よくて、楽しいことをできているおかげか、今が一番、私らしくいられます。人に対するイメージのために自分を変えるのではなく、自分らしさを音楽にすることができるので、きっと、これまでよりもいい音楽を届けることができます。もちろん、これまでやってきた音楽も自分のすべてだと思っているので、アニメもゴスペルもR&Bも、アーティストとして自分ができることは全てやってもいいし、面白く生きいけるほうがいいのです」
活動拠点がニューヨークになるのか、日本になるのかは未知数だが、世界のどこにいても歌い届けることのできるアーティストTiAとして新たな自分を創り出すにちがいない。<敬称略 取材・ベイリー弘恵>
【プロフィール】
TiA(ティア)
16歳でエピックレコードよりメジャーデビュー。2ndシングル「流星」が人気アニメNARUTOのエンディングテーマとなりスマッシュヒット。1stアルバム「humming」が日本ゴールドディスク賞を獲得。2014年よりニューヨークに音楽の拠点を移し、世界を視野に入れた活動となる。
マイケルジャクソンやローリンヒル、ジェイムスブラウンなどの大スターを輩出した音楽の殿堂アポロシアターでは、同点優勝からの準優勝。(4度の出演)昨年、2万人が収容されるスタジアムで行われた、アメリカ最大級のマクドナルド主催ゴスペル大会にて2万人からファイナリストに選ばれ、日本人初優勝。
2017年の同大会では、女性ソロイスト部門とグループ部門の2つのファイナリストに1万人から選ばれ、
その実力の高い評価を証明した。
本場NYのR&B,Soul,の大会、Brooklyn X Factor、Star is born, Rip the Mic, など数々の優勝を獲得。前代未聞のアジア人快挙を成し遂げ、アメリカNYで注目を集めている。
【関連サイト】
TiA のブログ
https://ameblo.jp/tia-blog/
instagram tia_singer
Twitter _TiA_TiA_TiA_
【TiA出演のNYイベント情報】
J ANIME Night × Halloweenオフィシャルサイト
http://j-animenight.com/
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