NYにはリアルなホームレスとパフォーマーがいる???

話の前半は、私がハーレム日記を始めた2000年ごろからの話。

ホームレスは夏になると街に増えてくる。 これはパフォーマーホームレスが存在するからである。 もちろんこの厳しい冬を外で震えながら過したリアルなホームレスもいるのだが、 中には小遣い稼ぎの者が街頭に立っていたり、 電車の中で、いかにも貧乏そうに野良犬の数十倍は臭気を漂わせ歩いてお金を集める者の中には、パフォーマーホームレスの可能性もある。

dcp01687私の友人は、 ほとんど毎日、 近所の街頭に立っているホームレスにクォーターを渡していた。 ある日、 彼は仕事先のワールドトレードセンター付近を歩いていた。 夏の強い陽射しがぎらぎらとビルの谷間に差し込んでいる。 するとどこかで見た顔の男がビルの角の日陰で煙草を吹かしながら涼しげに立っていた。

『あー、 どこかで見た顔だと思ったら近所にいつもたむろしてるホームレスだ』そう気付いた彼は日頃の習慣か、 慌ててポケットを探るとクォーターを取り出した。 ホームレスに近づくとクォーターを彼に手渡そうとした。「ノーサンキュー」 クォーターをにぎりしめた彼の右手をチラリと見て、 男はボンドマーケットのビジネスマンのようにクールに首を横に振った。 その反応に驚いた友人は、「 どうしたんだ?なぜクォーターを受け取らないんだ?」 と問いただした。 男はさらりと「今、 バケーションなんだ」と言い、 再び煙草を吹かした。

更に別の友人によると、 やはり彼女の家の近所に立っているホームレスがいて、会えば必ずクォーターをカップに投げ込んでいた。 その日もホームレスが立っていたので、 彼女はバッグの中や御財布をあさってクォーターを探した。 だが、 たまたま小銭が一枚も見つからなかったので、 お金以外でなにか足しになる物をと、 善意に持っていた煙草をあげる事にした。 ホームレスはその煙草を受け取るやいなや、こんなものーという感じで道路に投げ捨てたという。

ホームレスというとシケモクをあさっているイメージがあるので、 煙草は喜ぶのだと思いがちなのだが、それはステレオタイプ。ノンスモーカーのホームレスも存在するという教訓である。

さらなるパフォーマーホームレスは地下鉄を利用して移動するジプシー・パフォーマーホームレス。30代前半の貧乏でしょうがない顔をした白人夫婦。彼らはきっとこの夏、パフォーマーホームレス売り上げナンバー1を記録したはずだ。 二人ともがぼろぼろのジーンズに汚れたトレーナーでぼろぼろのスーパーのビニール袋をさげている。 地下鉄が大きくゆれて奥さんが倒れそうになったりするのを支える夫、 いかにも食べていないから身体を支える力も無いという悲壮感がただよう。ミッドタウンの街頭でも同じ夫婦が太陽に照らされながら、 道路に座り込んで物乞いしているのを見かけた。 しかし、 この際はホットドックをほおばっていた。

長年にわたって活躍中のロングラン・パフォーマーホームレスは、ミッドタウンのブルーミングデールズ付近に、黒いゴミ袋をまとって地面にはいつくばるようにして座っているお婆ちゃん。鳥ガラのように痩せているので、明らかに一般人が思うホームレスなイメージにマッチする。(リアルなホームレスは、ピザの残りやパスタやらバーガーの残りそしてフライドチキンなどを常食としているためか、太っている人のほうが多い)。彼女は、私が渡米した96年ごろにも座っていたのだけど、2016年にも近くの場所で座っているのを目にした。なんと20年ものキャリアをほこるキャリアをほこるパフォーマーホームレスなのだ。

ここでリアルホームレスのエピソードを一つ。友人とダウンタウンを歩いているとホームレスがごみ箱をあさっていた。 彼は白い小さな袋を探し出すと、 その中に入っているピザをぱくりと口にした。 しばらく歩いてその場所を通り過ぎた後、
友人に「さすがホームレス、 ピザがあの袋に入ってるってよくわかったよねー」 というと彼は、
「えー?あーそういえばピザ食べてたよね」
「あのピザごみ箱から拾ってたんだよ」「そうだった?」
その様が、 あまりに自然に、 まるで冷蔵庫から残り物を取り出して食べたかのようだったから、 友人はそれをごみ箱だったと認識できなかったらしい。

まだまだ続くホームレスエピソード。時代は2015年から今へ。

ここからはリアルホームレスの話。グランドセントラル駅の北口そばには、20代の白人女性のホームレスがいる。おそらくドラッグ中毒なのか、彼女は痩せていて顔色も悪い。バンダナを頭に巻いてるときもあったりするので、ヒッピーあがりなのかもしれない。極寒の冬でも彼女は、ゆるぎない位置にてホームレスとしてたたずむ。早朝に私が電車を降りてオフィスへ向かう早朝6時にも彼女の姿を見たことがあるし、夜はおそくに私が居酒屋をでて酔っぱらい千鳥足で駅へむかっているところ、やはり同じ位置に彼女が座っているのを見かけたことがある。こうしてリアルなホームレスは昼夜や季節を問わず、置物のように同じ場所に座っていたり寝ていたりする。つまりは、その位置こそが彼らのホームなのかもしれない。

朝のラッシュの時間には、時折、同じようなバンダナを巻いたロックバンドのボロボロジーンズをはいたホームレス兄さんが彼女に声をかけている。カップルなのだろうか?まぁそんなことはどうでもいいけど、彼女は私がミッドタウンの今のオフィスに派遣されて3年がたつが、彼女はすでに3年間ここにいる。私が見かけるよりもっと前からいたかもしれないから、私よりもしかしたらここでのキャリアは長いのかもしれない。となると、そろそろ30代に突入しているのかな?

グランドセントラル駅の北口そばには、微笑ましいお年寄りのホームレスカップルもいる。しかし爺さんのほうは昭和の父みたいな頑固おやじキャラ。時折、婆さんがベイビーカーを使ってモノを集めているのか、使い終わって折りたたもうとしていると、「そうじゃないだろう」と爺さんがガラガラ声で怒鳴っていた。「こうかしら?」と婆さんが、再びやり直すと、「だから、そうじゃないって。まったく使えないなぁ~」と手伝うわけでもなく、さらに怒鳴っていた。婆さんは反論することもなく、黙って爺さんの言いなりになっている。そんなに叱られてホームレスしていても婆さんは爺さんから離れないのだ。よっぽど爺さんを愛しているのだなぁと羨ましく思うほどだ。

ホームレスにとって厳しい冬が今年もやってくる。オバマが大統領だった時代には、オバマケアも始まり、貧しい者も生き残れるようにと少しずつ人間が平等に生き残るすべが改善されてきていた。人々もホームレスの人たちに対しあたたかい気持ちが芽生えていたのにちがいない。その証拠とまではいかないが、寒空にたたずむホームレスにNYPDの警官がブーツをはかせてあげるという心温まるエピソードがフェースブックで話題となったこともある。(っつても、家はあったという話だが・・・)トランプが大統領になれば、金持ちばかりを援護して、貧しい人たちへの救済措置を施すことなく、こうしたホームレスの人たちがまずは生き残れなくなるのではと、それが一番の心配だ。

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