元プリンセス・プリンセスのギタリストであり、その後はソロ活動やVoo Doo Hawaiiansを経て
現在は作詞家としても数多くのシンガーに作品を提供している中山加奈子。
(Photo by Hiroko Miyashita)
ニューヨークでTOKYO ROCKSを結成。 NYに遊びに来るだけのつもりが、それならライブをやろうということで結成されたというTOKYO ROCKS。
9月4日(土)ブルックリンのTrashbarでのショウを成功させた彼らが、9月9日(木)マンハッタンのBowery Electricで過ぎ行く夏を呼び戻すような
エナジー溢れるショウを見せてくれた。
Noho地区の東端Bowery StにあるBowery ElectricはRamonesやPatti Smithなどが何度もショウを行った
アメリカンパンクの聖地CBGBからわずか2ブロックの場所にあり、CBGBなきあとも数多くの地元ミュージシャンが集う場所となっている。
今回のショウは地元で精力的に活動中のパンクバンドDirty ShamesのLisa Lushがホストを務め、計6バンドが出演。
NYのそこここの街角で毎晩のように行われているショウのひとつである。だがそこはなんと言っても世界のエンターテイメントの発信地NY。
出演者の中には元the Nervesのドラマーで、数多くのミュージシャンにカバーされている ”Rock N Roll Girl”や”Walking Out On Love”を生み出した
アメリカン・パワーポップの源流ポール・コリンズのPaul Collins Beatや、
耳の肥えた地元のロックファンを現在進行形で沸かせているガレージパンクバンドが名を連ねている。
TOKYO ROCKSは三番手。今回のショウに関しては大々的なインフォームがおこなわれたわけではないにも関わらず、
会場の興奮はピークに達していた。豹柄のスーツに身を包んだ中山。手にしたギターとともに小さな身体から溢れるエネルギーを爆発させると、
集まったファンと地元のロックキッズが入り混じった騒ぎに。
鮮やかな赤い帽子とジャケットを身にまとったベースの曽我”JETTSOUL”将之は、VooDoo Hawaiiansのメンバーでもある。
ドラムのジョーによる片言の日本語の挨拶で会場を沸かせた直後、エルビス・プレスリーの
”I can’t stop falling love with you”のカバーをジョーのボーカルで披露。
週末でもないウィークデイにこんなに贅沢なショウがストリートに転がっているのがNYの醍醐味。
週5日の終わりのない労働と日々戦う甲斐があるというものである。奥のバーでは女の子がリズムに合わせて踊っている。
接触できそうなほど距離が近く、観客とほぼ同じ目の高さにある小さなステージでは、
演奏者と観客が音楽という接着剤でシンプルに結びついたパーティーが生まれるのはたやすい。
「Thank you We are TOKYO ROCKS」と深々とお辞儀をしステージを後にした。
ライブ終了後のNY1Pageによるインタビューでは「ブルックリンもマンハッタンもお客さんの反応がストレートでとても楽しめました」と満足げな笑顔と共に、
「TOKYO ROCKSは今回一度きりの結成です。でもすごく楽しかったのでもしかしたら来年もあるかもしれません」と再結成も示唆してくれた。
プリンセス・プリンセスでもVoo Doo Hawaiiansでも、常にロックが生まれたころの原風景に回帰させてくれるようなギターを聴かせてくれている中山。
この夜はガレージパンクナイトにふさわしくパワフルで勢いのあるステージングで極東ロックの意気込みを見せつけてくれた。
ロック好きによるロックのための宴は夜更けまで続いた。夢のような一夜は一瞬で過ぎていくが、その輝きはいつまでも色あせることはない。
(インタビュー:Yoshiko Sakamoto)