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第三十九号 03/19/2000
Harlem日記
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*****エクスターミネーター*****
ブルックリンの閑静なアパートに3人の日本人女同士、合宿生活のようにして暮らしていた頃、とある人物より預かっていたお犬様によってノミなるものが繁殖したのであった。
そう、あのノミである。小さな黒いミジンコみたいな形状の、奴らのサイズから算出するとおよそビル100階分の跳躍力を持つといわれる、食いつかれると痒くて痒くて思い出しただけでも痒くて、今、これを書きながら、太ももをボリボリと掻いてしまった。
ノミは容赦なく人間にも襲いかかるのであった。
Mちゃんの部屋は、お犬様も寝室として使用されていた部屋だったため、ノミの数もはんぱじゃなかった。彼女の足はノミに食い荒らされ、赤く腫れ上がり、まるで、やばい病気にかかった人みたいに皮膚が醜く侵食されていった。
Wちゃんの部屋にも私の部屋にもにも奴らは潜在していた。一度など水の入ったコップを床に置いていたら一瞬のうちにノミがコップに飛び込んで自殺したくらいである。
会社にもノミはついて来た。PCをカタカタやってると、突然、ものすごい勢いでバババーッと背中に喰らいつきはじめた。慌ててトイレに駆け込んでシャツを脱いでみると、20箇所以上赤く腫れ上がっている。痒さも気が狂いそうな程で、キーッと両手でボリボリ背中を掻きむしった。
最初は、3人でダニアース(日本製)を買い込んでノミ殺しに挑んだ。モクモクと煙が部屋中に広がる。これでようやく安心の毎日と思いきや、まったく効果はなし。
同時にお犬様をサロンへ連れて行って洗ったりもした。
次に試したのはフリーキラー(アメリカ製)なるノミ殺し専用パウダー。お犬様にもふりかけた。フロアーのそこいらじゅうが真っ白の粉だらけ。
やっぱり効果はない。
1ヶ月も過ぎた頃、初対面だった彼女たちと私は、すっかり仲間意識も芽生え、合言葉は「ノミどうなった?」であった。
ノミとの闘いで精神的にも肉体的にも疲労のたまっていく毎日、週末にもノミ意外の思考をめぐらせることは不可能であった。電話帳をパラパラと探して、何かいい方法はないか?と思案していた私。
ノミやゴキブリの絵の広告を発見。エクスターミネーターなるものの存在を確認したのだった。シュワちゃんのファンクラブかな?と一瞬思ったが(ちょっとはずしたな)、これはどうやら害虫を駆除してくれるプロフェッショルなのであった。
すぐさま電話。
2回で100ドル程度だという。
「OK、すぐにきて。」と予約。
彼らは昼間にやってきた。映画ゴーストバスターズみたいな格好の作業服。背負った害虫駆除のタンクの細い管のさきからチューチューと液体が出ている。隅から隅まで丁寧に撒いてもらう。
一瞬にして彼らは去っていった。
その夜は、久しぶりに安らかな眠りについた。
だが、2週間もしないうち、多少残っていたノミが再び活動をはじめた。そして2度目の訪問。エクスターミネーターがやって来た。
どうやらノミとの闘いは終わったようである。
女三人、ノミのいないクリーンな床に、ぺったりと座ることもできるようになり、ボロボロの本棚をちゃぶ台がわりに囲んで酒盛り。勝利の充足感にしばし酔いしれるのであった。
Black young woman laughing while resting with her dog on sofa at home