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第三十四号 03/02/2000
Harlem日記
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*****St.Nick’s Pub ***** (すでに閉店)
149丁目のセントニコラスアベニューのジャズバーに行った。ACライン145丁目で地下鉄の出口を上がると懐かしい風景。そういえば、私の友人がここのバーの角を曲がった所から3つ目のアパートに住んでいた。
1995年、NYに来て間もない頃ここに居候していたのであった。この店の前を通るときジャズが聞こえてきてたなーと思い出した。当時は「外へ出るな、危ないから。」といってカギを渡されなかったので、ほとんど軟禁状態であったが。
夜にハーレムのHPを書く日本人女2人のみで、ここへこうして来れるなんて不思議。と涙ぐむ私。(ちょっとオーバーか)といって居候先の友人も隣の部屋のジャンキーがうるさすぎてブルックリンへ引っ越したらしいが。
バーに入ると土曜日の夜まだ8時過ぎだったので、空いていた。バーにはブラックのおばちゃんバーメイドが。「なにを飲む?」と聞いてきたので。
「ウォッカマティーニをレモンツイストでお願い。」と言ったら。
「だめよーそんな強いの作れない。」「あなたは?」と私を後回しにして同行していたかおるちゃんに問う。
「カルーアミルク」
「OK」
さーっとコーヒー牛乳みたいなカクテルを作ると彼女に手渡した。
「さあ、決まった?なに飲むの?」
「だからーウォッカのマティーニ、あっ、ちょっと待った。やっぱりボンベイサファイアのマティーニにするわ。」
「だめー。そんなの飲んだらぶっ倒れちゃうから。」とおばちゃんは首を横にふる。
「えー、そんなー、いつも飲んでるからさー、つくってよー。」と頑固にオーダー。
「絶対にぶっ倒れないって約束してよ。」と言いながらしぶしぶ作るおばちゃん。
でも、レシピが?マティーニなのに思いっきり甘いオレンジ系リキュールを入れてるやないの。
「ちょっとまったー」と口をはさむ前に、ドンッとカクテルをテーブルに置いた。
「ありがとう」といって受け取る。とりあえず飲んでみる。
うまいじゃないか。
かわいいレモンも浮いていたりなんかして。そんなに甘くないし柑橘系とマッチしている。
「どう?味は。」おばちゃん聞いてきた。
「ベリーグッドよー。」私の答えに彼女がウィンク。
ボンベイサファイアなのに3ドルという安さ。思わずチップもはずんでしまう。2杯目をオーダーしたら、大きなシャンパングラスにオレンジ系のカクテルをサービスしてくれた。「皆には内緒よ。」
さっきまで飲みすぎるなって説教してたくせに。
9時にはおばちゃんの就労を終える時間らしく、コートを着て出てきた。カウンターには銀色のブルゾンに白いパンツの若いブラックの姉ちゃんが入る。やっぱー稼ぎ時には姉さんの方がよいのかな?などと思いながらおばちゃんに、さよならを告げる。
「ありがとね。酔っ払うんじゃないわよ。またね。」おばちゃんは、ちゃっちゃとした足取りで去っていった。
ジャズの演奏が始まる頃には、観光客やブラックのじいさん達だらけになってしまう。バックバンドは白人がほとんどで、サックスプレーヤーは白髪のブラックのおじいちゃん。
「かっこいいー」のだ。
完璧な音の重なりと狂いのないサックスの旋律。正確なリズムを刻む。じいちゃんの肺活量は少しの衰えも感じさせない。思わず「フーッ」とか、「ホー」とか「イェーイ」とか声をかけてしまうのであった。
「125丁目のショーマンズより、いいプレーヤーじゃないの。」と大騒ぎしてたら、かおるちゃん「だから、本当はあまり人には場所を教えたくないのよ。」とのたまった。
「えーそんなケチなこと言ってちゃだめだよ。日本の人にこういう文化を伝えるのが私たちの使命じゃない。」と勝手にハーレムの使者気分の私であった。
演奏中、かおるちゃんはブラックの自称パーティーマンを名乗るじいちゃんにつかまって話し込んでいた。彼女が何を話していたのかはかおるちゃんのHPで公開するそうだ。
私はちょっとトイレに立った。演奏者の横を通り過ぎる際に白髪のサックスのじいちゃんに「最高のプレーじゃない。」って言いながら、お尻をつついたら。「だから言ったろー。」と演奏中にも関わらず反応した。
やっぱり音楽をやってる人っていくつになってもクールだなーと羨ましくなった。
私も未発表作品の「おぅおぅあざらしさん」を世の中にひろめなければ。と「だんご3兄弟」につぐ大ヒットを夢見るのであった。
オンラインで頑張ろうとしているようですが。