ラ・ママ劇場は、ダウンタウンにあるオフ・オフ・ブロードウェイの劇場。ここでダンサー折原美樹とミュージシャン大江千里、そして舞台映像演出スペシャリストの西山裕之が創りだした「In the Box2 – You and Me-」のワールドプレミアが上演された。セリフや解説などはなく、見る人が感じたままに捉えることのできるパフォーマンスである。
ステージの前には薄暗い劇場は、たくさんの観客でうまっていた。透きとおる白いカーテンが観客に覆いかぶさるようにかけてあった。何に使うのかと思っていたら、ショーが始まると、そこにさまざまな画像が映し出された。
ピアノを演奏する大江もまるでイラストライターが白黒で絵を描いたみたいな画像っぽく白いカーテンに投影される。そこにいるのに、まるでそこにいないような不思議なアート空間だ。

大江の流れるようなピアノの音とともに折原の細い身体は、白い布の中で蚕の幼虫が繭をつくっているように、妖艶な動きをする。
白人男性、白人女性、黒人女性の3人の若いダンサーたちの迫力あるダンスは線が太くて現実味がある。彼らの中心に立ってゆっくりと回っているだけの折原なのだが、空気のように軽やかでまるで妖精のようだ。その3人の若い肉体が突然折原にぶつかってきて、折原は怯える。
見る人によっては、折原はショーの中では引きこもりのような存在であり、テーマであるBoxから出てきたのだと感じたという。
私には、ティーンエイジャーを抱えてるママが3人の子供たちをうまくコントロールできず悩んでいる姿にみえた。きっとそれは、私自身がこれから乗りこえていくべきテーマだからこそ、そういう風にみえたのだろう。こうして見る人がそれぞれの解釈をゆるされる空間なのだ。

大江のピアノは癒しの空間となったり、躍動感ある音をつくりだす。あらかじめ大江自身のピアノやピアニカを使ってサウンドエフェクトされた音楽も素晴らしい。その音楽と生でコラボするのが本人というのもユニークだ。
白いドレスを着た流れるようなダンスに光をあて、氷ばかりに囲まれた世界のような幻想的な視覚効果を与えられる。まるで鶴の恩返しの現代版のよう。鳥のように舞う折原が、空へ飛んでいって消えてしまいそうなほどに美しい。
会場に来ていたアメリカ人の女性に感想をうかがったところ、「グラフィックの映像が、シャープであったり、美しかったりと、印象に残った。とても斬新なショーだった」と語った。この斬新なショーをぜひ日本でも皆さんに観てほしい。<敬称略 取材 ベイリー弘恵 取材協力 Mar Creation>

