NYで女優をしている、Saokoと申します。
でもね。「女優」と名乗りはするものの、「レッドカーペット」だとか「ブロードウェイ」といった華やかな場所には、まだ縁がありません。将来的にそういう経験もしたいと思ってはいますが、残念ながら現在は、そこからちょっと?遠い所にいます。
正直、私って何でこんなにダメなんだろうと、落ち込む時もありますが、落ち込むだけ落ち込んで泣くだけ泣いたら、後は立ち上がるだけ。自分の前を見渡せば、そこには無限の可能性が広がっているのです。
NYで暮らしていると、見知らぬ人から気軽に話し掛けられる事がよくあります。地下鉄、公園、路上、角のデリ、などなど。「ハロー!日本人?」「そうだけど?」「コンニチハ。」「あ、日本語話すの?」そんな所から始まる会話の中で、たまに「What do you do? 仕事は?」と聞かれる事があります。学生ビザだった頃はまだ躊躇があって、「えーっと、演劇学校に通ってる…。」と答えていましたが、昨年念願のO ビザも取得し、「I’m an actress! 女優!」と胸を張って答えられるようになりました。そして、そう言葉に出来るようになった自分を褒めてあげたいと思うのです。何故なら…。
日本に居た頃、この質問に対しては、「派遣社員ですが、趣味でたまに芝居したり…。」とつい言葉を濁しがちでした。「役者です」「女優です」って言う事が、どうも出来なくて。 CMに出てる訳でもなく、毎月のように公演に出てる訳でもなく。毎朝定時に満員電車で都内に通勤したりしている私が、「女優」だなんて言えるんだろうか?、そんな事言ったら人からどう思われるんだろう?という漠然とした不安。「もういい年なんだし、そろそろ現実を認識したほうがいいんじゃない?」という周りからの無言のプレッシャー。それに加えて、「演劇で生計を立てていない」という明らかな事実。そんな事情から、自己紹介で「女優です」とは名乗った事は、殆どありませんでした。
でも、NYで暮らして、早5年。色んな人に出会いました。会社員だけど名刺の肩書きは「詩人」な人とか、ジャズプレヤーで「昼間は趣味でコピー機売ってます」と公言されている某有名企業の日本人さんとか、税理士で俳優とか、ウェイターしながらダンサーとか(これはありふれ過ぎてますね、笑。)。ここには、型にはまらない個性的な人達が、本当にたくさんたくさん居るのです。そんな人達との出会いは、私に大きな影響を与えました。
そして、そこから学んだものの一つが、何と名乗るかは自分が決める事なんだ、自分をどう表現するのかは自分次第なんだ、という事です。未だに俳優として食べていけてはいませんが、(って、そもそもこの職業でそれが可能なのかは、大きな疑問ですが…、笑)、その収入の大小にかかわらず、自分は女優なんだという自覚、そしてその将来に向けて自分は努力しているんだという自負、この二つによって今は胸を張って「女優です。」と言えるようになったのです。
NYに初めて旅行に来た20歳の夏、私はNYに恋に落ちました。そして、 JFK空港へ向かう帰り道、「女優になりたいんだけどねぇ…。」と語った私に、タクシーの運転手さんがこう言いました。「You can do anything you want. This is NY! やりたい事は何でも出来るよ。ここはNYなんだから!」もうかなり以前の話ですが、今も日々の生活でしみじみとその言葉を実感しています。そして思うのは、たぶんNYに限らずどこに国に居ても、それは同じ事。全ては自分次第、気の持ちようなのではないでしょうか…?
でも、私はこんなNYが大好き!!なので、ずっとここにいるつもり(笑)