本番前日のリハーサルがいかに大切かは、ダンスをやっていない方でも用意に想像がつくだろう。
FDCのリハーサルも然り。
入念なドレスリハーサル(衣装着用のリハーサル)を行うはずだった。
そう、はずだった。
カンパニーの頭取である、Angel Felicianoから僕の携帯にメールが届いたのはリハーサルの2時間前。
僕はまだ自宅いた。
家からリハーサル場所まで40分。
まだ1時間以上も余裕がある。
僕は洗濯物をたたんでいた。
もちろん、衣装は既にバックの中に詰めてある。
ぬかりはない。
Angelから送られてきたメールの内容を確認する。
「衣装を変更する。”Avatar”のような衣装を持ってきてくれ。」
何っ!?
ここに来て衣装の変更だって?
おいおい、正気かAngel?
ケンドーコバヤシ風に言うなら、「Angelさん、正気ですか?」
しかも、Avatarって・・・
Avatarというのは、今、アメリカで最も人気のある3D映画である。
日本でも相当な人気らしいが、アメリカではその映画を見てない人はいないんじゃないかというくらい僕の周りの友人は全員見ている。
まだ見ていない僕が異端者としてカンパニー内で迫害を受けたのが先週の出来事だった。
特徴が、動物のような顔立ち。
というか、むしろ半獣人。
そして、青い肌と衣服。
半獣人の衣装なら何とかなる。
幸運なことに、僕はたまたま猫耳を所持している。
なぜ、そのような物を所持しているかは、ここではあえて伏せておこう。
問題は衣装だ。
青い服の衣装・・・
適切なものが僕のクローゼットにはない。
仕方ない、買い物にこう。
僕は意を決して、Angelにメールを返信した。
「Angel、僕はAvatar風の衣装を持ち合わせていないから、買いに行ってくる。だから、30分の遅刻を許して欲しい。」
そして、Angelからの返信。
「ははははは!」
はぁっ!?
人が真面目に相談してるのに、「ははは」じゃねーよ。
何なんだ、このおっさん。
※Angelは僕の上司です。
しかし、僕も大人だ。
いくら、社長がふざけていても、上司に大しては相応の態度で接するのが部下である。
「遅刻を許して頂きたい。」
そして、再度Angel。
「Nobuya、ジョークに決まってるじゃないか!衣装は変えないよ!」
え、ジョーク?
嘘だってこと・・・。
他のカンパニーメンバーは、当然のように彼のメールがジョークだと分かっていた。
ニューヨークで生活を始めてから間もなく4年。
どうやら、僕はアメリカンジョークをまだ理解していないようだった・・・
“LOVE IS LOVE”
日時:1月18日(月)開場22:30~、開演23:30~
場所:HIGHLINE BALLROOM(431 West 16th Street, New YorK)