正直、今回は池田夢見に取材をすることを少し躊躇していた。まず私は、日本の女性の爽やかな声で歌ってる歌を聴くことが苦手というのもある。夢見のビデオをYOUTUBEで見ていると、彼女の歌がスカッと喉をうるおすソーダのように、私にはあまりにも爽やかすぎたのである。
しかし「がんばりや」のビデオを見てるときに、ダウン症の女性が絵をいっしょうけんめい描いてるが姿が映し出された。アメリカでは、ダウン症であっても普通にドラマの役者としてテレビに出ていたりするけど、日本ではまだ見たことがない。その上、いかにもって痛々しさを前面だすのではなく、彼女がとても自然に出演していることに興味をもった。
きっと夢見というアーティストは、心ある人間であり、ただ爽やかな声で歌ってるアイドルのようなシンガーとは違うのだと思うと、取材させていただきたいと心から思った。
まずは、どういったきっかけでダウン症の子が、ビデオに出演しているのか?ということからお話をうかがった。「彼女はたえさんという方なのですが、デザイナーとしてお仕事をされているんです。それで、私の3枚目になりますアルバムのジャケットに絵を描いていただきました。それがきっかけとなって彼女がお仕事している姿や、夢に向かってがんばっている姿を動画の中に入れたくて、出演していただきました」
「がんばりや」のほかにも人を勇気づける音楽が多いのですが、どんなときに音楽がうかんでくるのですか?「私は、応援ソングを歌う自称チアリング・ソングライターなのです。ジョギングが趣味なのですが、走っているときに無になっているからか、歌詞がうかんできます。むずかしい言葉や、きれいな言葉を選ぶより、気持ちをまっすぐ等身大で伝えたいので、ストレートな歌詞が多いです」
今回、ニューヨークに来たのは初めてで、空気感もちがっているからか、いい刺激となったという。ステージを観に来ている客は日本人とアメリカ人が半分半分だったため、緊張もしなかった。「生で歌をアメリカ人に聞いてもらうのは初めてだったのですが、私は日本語の詩の内容に重点をおいてるので、彼らに伝わるのか心配でした。それでも最後に『上を向いて歩こう』を歌ったとき、手拍子をしたり、一緒に歌ってくださった方もいたり、一つになれた感じがしてうれしかったです」
海外活動しようと思ったきっかけとなったのは、311陸前高田市チャリティーイベントのゆるキャラが「たかたのゆめちゃん」。夢見は「大阪のゆめちゃん」というあだ名だったこともありNPO法人陸前高田市支援連絡協議会 Aid TAKATAへ、支援できることがないか連絡をとったという。「七夕のお祭りに、子供たちが元気になるような音頭を書いてほしいと、リクエストがありました。ゆめちゃんおんどを踊りつきで作りました。そこで知り合った方から、アーティストへの海外活動支援(※)があることを教えていただいたことがきっかけとなりました。」
「インタビューを通じて、池田夢見というアーティストがいることをたくさんの人に知ってもらえたらありがたいです。そして私の音楽をYOUTUBEを通して聞いてほしいです。海外でも活動できるようレベルアップしていきたいです」
私の予想をはるかに超えて夢見はパワフルでボランティア精神旺盛なアーティストだった。彼女の音楽からだけでなく、彼女自身、人に勇気を与えることのできるパワーと、人の心を温かく包みこんでくれる優しさをもつ。彼女のパワーと優しさは、ニューヨークを皮切りに、世界を応援するかのごとく広がっていくに違いない。
<敬称略 取材・執筆 弘恵ベイリー>
※経済産業省傘下の団体が国の強化事業として、音楽や映画・アニメなどのソフトコンテンツに関し補助金を拠出、同分野の世界市場での認知拡大に向けた施策。
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