まるで村上春樹の1Q84を見ているよう「In the Box」

(c)Yoji Kawada
(c)Yoji Kawada

In the Box「肉体とテクノロジーが生み出す 新しい表現の実験的コラボレーション」

まったくどんな内容なのか私は下調べをしていかなかったからか、舞台がはじまると同時に発せられた英語の解説を聞いても内容をよく把握できなかった。

だからか、かえってダンサーの細やかな動きや、
美しいダンサーの動きにかぶさるCG、そして音楽をピュアーに楽しめた。

まず最初に、真っ暗なステージの中、布に包まれた人が内部からライトアップされた。
その姿はまるで繭の中で育つ蚕のようだった。このイメージは、私が村上春樹氏の
1Q84という小説を読んでいたものとまったく一致していた。

ステージの上をこの繭は引きずられ、舞台のそでに消えていく。

次に、陰陽が表現されているのだろう、白い衣装と黒い衣装をまとったダンサーが対比され、それぞれがミシンでそれぞれの布の縫製をはじまる。ミシンの音がガタガタと会場に鳴りひびいた。

その後も、日本のスピリチャルな「わびさび」から表現されているようなダンスが続く。
女性二人のスローな動き、男女のダンサーが出会いから別れまでをスピード感と躍動感あるダンスで表現する。

それに絡むCGも素晴らしいものだった。レーザー光線で描かれるさまざまな色や形が、世の中の移り変わりを
表現しているようだ。ダンサーがステップしたり、手をあてると、まるで水たまりの上で動いているかのように、
床に水の波があらわれるのも美しい。

(c)Yoji Kawada
(c)Yoji Kawada

途中、ライヴで登場する大江千里さんのピアニカ演奏も効果的だった。
マイナスのエネルギーをプラスに変えていくということが、背景に浮かぶ陰陽の漢字の変化によって描きだされる。

このステージは、シュレーディンガーの猫(シュレーディンガー博士が量子力学の確率的解釈を批判する為に提唱した
思考実験)からインスピレーションを得て作られたものだという。

なるほど、生と死の境っていうのは、どんな偉い学者によっても解明できていないし、やはり神のみぞ知るってこと。
このステージを観ていると、一瞬、自分がどこにいるのかを忘れ、生きているのか、死んでいるのかを考えさせられる
瞬間があったような気がする。

そんな瞬間を味わいたい人は、ぜひIn the Boxのステージをリアルに見ておくべきだろう。
今回の公演はワールドプレミアだったので、日本でもこのステージを観れる日がくるはずだ。 

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください