「美しさにサイズはない」NYFWでRenee Cafaro Atelierが見せた新しいクチュール、日本人モデルAi Momokaも登場
9月12日、ニューヨークのリンカーン・センターでコレクションを発表したのは、ニューヨーク発のクチュールブランドRenee Cafaro Atelier(レネー・カファロ・アトリエ)。
今回発表されたのは、2027年春夏コレクション「The Alchemy」。さらに、サプライズとしてブライダル・コレクション「Something Borrowed」も披露された。
Renee Cafaro Atelierにとって、今回が9月のNYFWで5回目の発表となる。
ハイファッションから「取り残されてきた人」のために
Renee Cafaro Atelierは、従来のハイファッションの世界で「自分のための服がない」と感じてきた人たちに、本格的なクチュールを届けることを目指してきたブランドだ。
その原点にあるのが、プラスサイズの人々へのファッションである。
ブランドを手がけるデザイナー、Renee Cafaroは、プラスサイズであるにもかかわらず、ラグジュアリーな服を楽しみたい人たちの選択肢があまりにも少ないことに疑問を持っていた。そこから、サイズが大きくなってもデザインや素材、フィット感に妥協しない服づくりをスタートさせた。現在では、身体のサイズだけでなく、ジェンダーや従来のファッション業界の枠組みにとらわれない、よりインクルーシブなオーダーメイドのクチュールへとその世界を広げている。
また、服はニューヨークのガーメント・ディストリクト(Garment District、マンハッタンにあるファッション・衣料産業が集まる地区)を中心に、熟練した職人たちによって倫理的かつフェアな賃金のもとで制作されている。華やかなランウェイの裏側に、ニューヨークのものづくりを守ろうという姿勢があるのも、このブランドらしさだ。
「The Alchemy」違いをひとつの美しさへ
今回の「The Alchemy(錬金術)」というタイトルには、まさにブランドの現在地が表れている。
テーマとなったのは、変容、コラボレーション、そして循環。
アーティストや職人、歴史家、タトゥーアーティスト、タロットの専門家、そしてブランドを支えてきたモデルたちまで、さまざまな人々とのコラボレーションから生まれた。
トンガの伝統的なタトゥーを刺繍として再解釈したものや、歴史あるウクライナのビーズ細工など、異なる文化やクラフトの要素も取り入れられている。さらに、過去のコレクションの作品やヴィンテージ素材、すでに存在する資源を再利用するなど、「新しいものを作る=すべてを一から作る」という発想にもとらわれない。
違う時代、違う文化、違う身体、違う感性。
それらをひとつに混ぜ合わせ、新しい美しさへと変えていく―まさに「Alchemy」という名前にふさわしいコレクションだった。
「The Alchemy」に続いて登場したのが、ブライダル・コレクション「Something Borrowed」だ。
ウェディングドレスの世界もまた、「花嫁はこうあるべき」という伝統的な美のイメージが強く残ってきた世界だ。しかしRenee Cafaro Atelierのブライダルは、サイズやジェンダー、スタイルにかかわらず、より多くの人がラグジュアリーなウェディング・ファッションの中に「自分」を見つけられることを目指している。
そのランウェイに、日本からAi Momoka
そして今回も、Renee Cafaro Atelierのランウェイに登場した日本人が、プラスサイズモデルのAi Momoka(桃果愛)だ。
今回の彼女の装いを目にした瞬間、日本人ならどこか懐かしいイメージを重ねた人もいるかもしれない。
まるで、日本の伝説に登場する「天女の羽衣」のようだった。
ふわりと身体を包む衣装をまとい、Ai Momokaは堂々とランウェイに登場した。そのウォークもまた、衣装の軽やかさと相まって、まるで天女が舞い降りてきたかのよう。ニューヨークのランウェイでありながら、そこにどこか日本的な美しさを感じたのが印象的だった。
私が初めて彼女を取材したのは2024年、Ai Momokaが初めてNYファッション・ウィークに登場したときだった。
2024年の記事「日本のプラスサイズモデルAi MomokaがNYファッション・ウィークに初登場!」
2025年の記事「NYファッションウィークに桃果愛が再びランウェイに登場!」
当時のインタビューで彼女が語っていたのは、単に「プラスサイズモデル」という存在を知ってもらうことだけが目的ではないということ。その先にある、「いろいろな人がいてもいい」という感性を広めたいという思いだった。再びニューヨークの舞台に立った。天女のように軽やかに、そして堂々とランウェイを歩く彼女の姿を見ていると、あのとき語っていた思いが少しずつ形になっているようにも感じられた。
ファッションは「誰のもの」なのか
Renee Cafaro AtelierとAi Momoka。
ニューヨークのブランドと、日本からやってきたモデル。一見するとまったく別のストーリーのようだが、両者が目指している方向は驚くほど似ている。
それは、これまでスポットライトが当たりにくかった人にも、スポットライトを当てること。
細くなければモデルになれない。
若くなければ美しくない。
あるサイズでなければハイファッションを着られない。
花嫁はこうでなければならない。
そんな、いつの間にか私たちの中にできあがっていた「美しさの条件」を、一つずつ取り払っていく。
今回のランウェイには、体型も年齢も人種も、それぞれ異なるモデルたちが登場した。
だからこそ、見ているうちに「プラスサイズのファッションショー」という言葉さえ、少しずつ必要なくなっていくのかもしれない、と感じた。
特別な人たちのためのファッションではなく、最初から、いろいろな人がいて当たり前のファッション。
2024年に初めて取材したとき、Ai Momokaが話していた「いろいろな人がいてもいい」という言葉。
あれから2年。
Renee Cafaro Atelierのランウェイを堂々と歩く彼女を見ながら、その言葉が少しずつ現実のものになっているような気がした。
デザイナーのRenee Cafaroが、モデルさんたちの先頭にて登場。とてもフレンドリーで、明るい人のようだ。

会場には、instagramで約30万人のフォロワーを持つニューヨークのクリエイター、俳優、アーティストのLoco Ninjaの姿もあった。Spanish Harlem出身で、ニューヨークのボールルーム・カルチャーとも深いつながりを持ち、音楽、パフォーマンス、ファッションなど幅広い分野で活動している人物だ。ジェンダーレスな装いでショーを見守るその姿は、客席でもひときわ存在感を放っていた。
私の真横に座っていた女性も、オレンジで素敵なドレスだった。友人がデザインしてくれたのだという。
<取材・執筆 弘恵ベイリー>
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