インディゴブルーを基調とした内装に朱色のポップなカウンターチェアー。バーカウンターの中ではバーテンダーがシェイカーを振り、マティーニグラスにカクテルを注いでいる。そんな店内に足を一歩踏み入れると、おしゃれなカクテルバーにでも来たような感覚に陥る。今まで訪れていたラーメン屋とは別世界だ。

ここ数年でラーメン激戦区と化したマンハッタンに、 Tonchin New York はエンパイアステートからほど近い36丁目に店をオープンした。バーカウンターを通り過ぎると、そこにはテーブル席とブース席が広がる。その奥はオープンキッチンとなっており、どの席からでも活気の良い厨房内の様子が窺える。器やコースターもジオメトリックなデザインでポップとシックが融合したNYらしいモダンな作りではあるが、色使いや焼杉版を思わせる木造のブースは日本らしさを感じさせる。

ドリンクメニューにはユズフィズ、シソモスコミュールなど日本の食材を使ったカクテルが並ぶ。スレートボードの上にサーブされたサケティーニは純米大吟醸をベースにエルダーフラワーやグレープフルーツなど合わせたフルーティーな仕上がり。添えられた白ブドウは食べると口の中に炭酸のシュワっとした感覚が広がりさわやかさを増す。あかしウィスキーを使ったカクテルメニューにはマンハッタンやゴットファーザーなどのクラシックなカクテルが並ぶ。琥珀色のマンハッタンは洗練された味わい。微妙なさじ加減で味が左右する難しいカクテルなだけに、ラーメン屋で美味しいマンハッタンに出会えるとはうれしい驚きだ。コーヒーリキュールのカルーアを加えたブラックウォッチは、カルーアの芳ばしい香りと甘みがウィスキーの深みと調和し、まろやかな口当たりで食後酒としても楽しめる。もちろん、カクテルのほかにもブルックリンにあるニューヨーク初の酒蔵、Brooklyn Kura のお酒や、ワイン、ビールなども取り揃えている。

アペタイザーにはお酒と一緒に楽しめるような魅力的なメニューがずらりと並ぶ。枝豆だけで　「やめられない止まらない　屯ちん旨塩と塩こぶのうまみダブルパンチ」「香りの違い　屋台のやげん七味とレモン塩」「夏だからやっぱりさっぱり　大葉とゆかりの冷たい枝豆」と3種類の味が用意されている。料理名にも遊び心があり、メニューは見ているだけで楽しい。枝豆だけでなく、しし唐も3種類の味が用意されている。中でも「香ばしさがたまらない海老味噌とパルミジャーノ」は旨味が効いた、他では見たことのない味付けだ。シグネチャーメニューの一つである「やみつき！屯ちん秘伝の手羽先　大都会東京の夜の味」は白コショウのピリッとした辛さとピンクペッパーのフルーティーさがマッチし、名前の通りやみつきになる。ボリュームがある1品としてはおにぎりやBunと呼ばれるニューヨークでも人気の中華風蒸しパンのサンドイッチが並ぶ。「自家製テリヤキ鶏つくねと和がらしの効いたコールスロー」のBunは、鶏つくねのふわっとした食感とコールスローのシャキッとした食感のコントラストがよく、和がらしが味全体を引き締めている。

主役のラーメンは東京とんこつが主体。カラフルなラーメンどんぶりに盛られたラーメンは見るからにお洒落。ラーメンは普通サイズのほかにハーフサイズもある。ハーフサイズは小食の人や、アペタイザーなどを注文し色々楽しみたい人にもってこいである。「屯ちん秘伝　東京豚骨ラーメン」は、豚骨ならではの濃くと深みはあるが、さらっとしていてくどさは無くとても食べやすい。チャーシューは上品な仕上がりで深みのあるスープとよく合う。極太のメンマは食感がとてもよく、卵の味付けも絶妙で黄身のねっとりさがたまらない。麺は喉越しの良い中太のちぢれ麺。メニューの中には2種類のビーガンラーメンも。ビーガン味噌生姜ラーメンは味噌の深い旨味が引き出され、ビーガンとは思えない濃くがある。もちろんチャーシューや煮卵は無いが、コーンや野菜、大豆ミートなど豊富なトッピングでビーガンでは無い人達でも十二分に楽しめる。

Tonchin New Yorkは「ラーメン屋＝ファーストフード」という型にはまらず、斬新でオリジナル性のあるニューヨークにピッタリのラーメン屋だ。昼休みにラーメンだけをさっと楽しむのも良いが、ぜひ夜に訪れて、目移りするメニューの中から数種のアペタイザーを選び、和を感じるカクテルやお酒と共にゆっくり時を楽しんでほしい。もちろん、〆には極上ラーメンを忘れずに。　-e  Instagram: @e_villagestone

 

Tonchin New York
13 W 36th Street
New York, NY 10018
Phone:646-692-9912
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