ニューヨークのチェルシーエリアで行われた2024年のJCAT Exhibitionのテーマは、「NATURE」(自然)。
日本人アーティストたちによる展示が行われていた。
今回、私のお目当ては、コニシマリさん作「空気彫刻」だった。オンラインで見ても透明のバルーンがまるで巨大なガラスのビー玉のようで、とても美しい透明感ある作品。
ご本人にお話をうかがってみると、今回はセントラルパークで直接感じた空気を、そのまま展示会場に持ち込んだのだという。
東京から作品を展示するためニューヨークへやってきて、都会の喧騒の中から逃れられるセントラルパークは、心がなごむ癒しの空間だったそうだ。
その彼女の視点を通してセントラルパークの風景や息吹を感じ、その場所の空気をバルーンに閉じ込めることで、等身大の自分を表現しているのだという。
興味深かったのは、バルーンを入れているフィルムだ。

コロナ禍のときに、ウイルス感染を防止するため、シールドとして開発された光を反発しないことで、フィルムを通しても相手の表情がみえるように大日本印刷によって開発された「DNP超低反射フェイスシールド」
実際にフィルムに近づいてみると、まったく光を反射しないため、バルーンだけが浮いているように見える上、バルーンだけが光を反射し、キラキラ美しかった。
ブレスキャンサーを克服して、その辛さだけではないという生命の力強さをアートにしたアーティストMikaさん。「ブレスキャンサーになった人たちの心を少しでも支えられるといいなという思いで、作品としての表現を始めました。」壊れたマシンの一部みたいなものがカラフルなポップアートの中にポツンと浮かんでるのだが。
「これは私の中にあったガン細胞のイメージを具体化した写真なのですが、それはアートに限らず、新たな可能性を自分に与えてくれた証のようなものです。」
思わず、
「なぜ英語でそれを解説しなかったのですか?一番必要な情報だと思うのですが。。。」
どこまでも謙虚なのが日本で育った日本人。人に自分の思いをぶつけすぎないよう、節度をわきまえてアートの作品も展示しているのだと感じた。
たしかに、実際のところ、このアートがキャンサー細胞なのだと言ってしまうと、キャンサーに直面している患者さんにはつらすぎる作品にちがいない。キャンサーを乗り越えたアーティストであるからこそ、キャンサー患者に寄り添える作品を表現できる上、公で発表する際にも、的確なのだ。
作品を見た人それぞれが受け取る側によって感じるべきという作品。

一人でも多くキャンサーに苦しむ人たちが、むろんキャンサーでない悩める人たちも、彼女のアートによって、その人にとって何らかのサポートになることを願うばかりだ。
NOHO M55 Galleryに展示されている。