結婚の申請その2

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第二十八号 02/10/2000

Harlem日記

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******結婚の申請その2*******

日本の母から戸籍抄本が届いた。離婚証明書をとるために必要なのだった。抄本を手にすると日本領事館へ一目散に駆け出した。領事館は午後からは1時半からやっているとわかっていたので、1時20分に到着。

でかでかと19階がメインっぽくエレベーター内の表示に書いてあるので、息をきらしながら19階へとのぼる。(さすがに階段を走ってはいない。あしからず。)すりガラスに日本領事館と刻銘に記されている。ここだここだーと呼吸を整える。

だがしかし、以前のチープな雰囲気とは違うぞ。前は飛行場のセキュリティーチェックみたいなピーッと鳴るアーチがあったはず。チェックしてくれる黒人兄さんの机も見当たらない。入り口のドアもこんなに重厚でなかったなー、などど、疑問に思いながら、そーっと覗いていた。

「なにか?御用でしょうか?」背後から声が聞こえた。はっと後ろを振り返るとダークグレーのスーツに身を包んだ白髪の上品な紳士が紺色のスーツの部下らしき男と佇んでいた。

「いえーあのー証明書を発行してもらいたくてー」
「18階ですよ。」彼は紳士っぽく丁寧に答えてくれた。
「あーそうですかー間違えちゃった。」

なんだか恥ずかしい思いをしながら「下る」のエレベーターのボタンを押す私。

あの人たちはエリートなんだろうなー。(また間違えやがって、この一般庶民の馬鹿、18階だっちゅーことぐらい確認してこんかい!)と心では思っているんだろうなー。などとコンプレックスの塊のような惨めな気持ちが沸き起こった。

18階には、既に6人くらいの人が、がっちり閉まったドアの前、エレベーターの周辺でたむろっていた。1時半かっきり、黒人兄ちゃん登場。なぜかこの兄ちゃん、人なつっこい。

「はーい、バッグをここへ置いてねー、そこをくぐってねー、バッグあけて見せてねー」
「Have a nice day!」まで言ってのける。こんな仕事を毎日繰り返すのも大変だなーと大きなお世話をしてしまった。

ガラス?いやプラスティックの向こうに領事館職員が顔を出す。セキュリティーのためとはいえ、なんだか特殊な動物みたいに隔離されてるノリ。なんて、それはコッチ側か。。。などと思いつつ、手にしたピンクの番号札を確認。

95番だ。

「81番、いませんか?82番、83番」どんどん数字があがっていく、誰も出てこない。
「90番」でいよいよ一人、窓口へ寄っていった。

しばらくして、「95番」いよいよ私の番だった。
姉さんは色白の20代後半らしき日本人で、不思議な黒い円形のパッチがついているダークグリーンのスーツを着ている。どこに売っているんだろう?とまたまた不思議に思ってしまった。(わざわざあの黒いパッチを付けなくてもー。)

「こんにちはー」彼女は私が窓口に、にじり寄るとそういった。
「こんにちは」私も答える。

エリートなんだろうなー。再び、コンプレックスの塊が、ぐいっと頭をもたげる。エリートなのに、庶民が書いてきた書類のチェックとかって、やっていることが面倒くさそうで申し訳ない。

(こんな仕事をするために子供のころから一日の時間を割いて勉強してきたんじゃないのよ。英語の単語を書いた紙をトイレの壁に貼ってまで覚える努力をして、いい大学に行ったんじゃないのよ。)って思ってるのではないだろうか?

と再び余計なお世話をした。

彼女は、そんな私の心の声に気づいたのか、無愛想だった。ほかの人には愛想がよかったのに。私には無愛想だった。

女性の心理として、彼女は明らかに独身だったので、バカにしか見えない私を、文字通りバカにしてしまったとしか思えない。(こんな、わけのわからない馬鹿女が、どこかの男と結婚するんだー。男も女が馬鹿かどうか見分ける力が必要だよね。)という言葉が聞こえてくるようだった。

これもまた女性の思い込みだと感じるかもしれないが、私は至って中立である。謙虚に相手の女性がどう思うかを分析する。
彼女の態度から、感じとったということは本当にそう思っていたはずだ。

だから、かえって謙虚に対応した。自分を強く誇示するタイミングと、ひくタイミングを計算した。

戸籍には結婚した日が記載されてなかった。だが、離婚申請書にはしっかりと入籍した日を記入しなければならなかった。

「彼女がこの戸籍抄本には結婚した日が掲載されていないので。。。」と言いながら周囲を見回した。誰かの意見を聞こうとした様子だった。だが、たまたま誰もいなかった。

ため息をつきながら、私が、市を入れてなかったところにCityとか県を入れてなかったところにPrefとかカモメマークを文字の間に丁寧に入れて訂正した。そして席を立つと裏で書類を作成しているらしきところへ持っていった。

(あいつらー離婚の証明だけでいいって言ってるのに、定型のフォームなんかつくりやがってー結婚日を証明できないから証明書を発行できない、なんて言ったら絶対文句言ってやる。こっちは離婚の日さえ証明してもらえりゃいいんだ。)と鼻息を荒くした。

1分もたたぬうちに裏から書類が回ってきた。(あーあれ絶対、私の書類だー)と心の中で思っていた。彼女が私の名前を呼んだ。

「結婚した日は証明できないのですが、それでよろしいでしょうか?」と、それみたことかといった調子で言った。
「勿論それで、かまいません。離婚の証明さえ取れればいいのだから。」と、クールに答えた。

勝ったーという手ごたえ。私があきらめると思ったら大間違いだぜ!彼女は静かに記載事項を取り消すと再び裏へ持っていった。

2,3分後に再び私の名前が呼ばれた。
「10ドルになります。」領収書を書きながら彼女が言った。
「あのーついでに婚姻届の用紙もいただけますか?」
(君たちのノロノロした手続きのために一日を無駄にされたくないのさー)とアルプスの山でヨーデルを歌う加山雄三(若大将)なのであった。

「日本人ですか?外国人ですか?」
「アメリカンです。」
ざっと6枚ほどの用紙と1冊の説明書を渡された。

余談だが、このあと彼がウエストチェスターのCity Hallにこの証明書を持っていったら、係りの者はちらりと見ただけで、コピーすら受け取らなかったそうである。

ノータリーのサインはどうなっとるんじゃい!と机をドンドンドンッ!と法廷の裁判官がたたく木づちで叩き割りたい気分だった。

日本のお役所の緻密さも鼻につくが、アメリカのお役所のいい加減さも耳からウニがでてきそうだ。

つづく

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