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第二十六号 02/07/2000
Harlem日記
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******結婚の申請その1*******
結婚の申請にあたり、まずシティーホール(市役所?)でライセンスなるものを取得しなくてはならないというので彼と二人で行くことになった。
ライセンスは入籍24時間前までには取得しておく必要がある。その後は教会で結婚を認めるサインを牧師さんにしてもらおうが、シティーホールでサインしてもらおうが、本人の自由なのだそうだ。
事務所みたいなところで係りの女性に「結婚のライセンスを取りに来ました。」と言うと、「じゃあこれに必要事項を記入して。」と用紙を渡された。生年月日、住所、出生地、国籍などをざーっと書きこんだが、結婚は初めてか?何度目か?という項目がある。
彼は1と書いていたが私は2と書く事となった。
いつ離婚したのか忘れてしまってた為、日付なんて適当でいいやとルーズに書きこんだのだが。。。
「書きこみ終わりましたか?では二人のIDを見せてください。」
二人ともパスポートを渡した。彼女はパスポートを見て間違いがないことを確認。カタカタとタイプを始めた。
昼どきだったため、途中、ピザ屋の兄ちゃんが昼飯を届けにきたり、運送屋の兄ちゃんと世間話をはじめたり、その間、私達は椅子に座ってボーっとしていた。
「このタイプした書類に間違いがないか、確認してください。」
二人でジーっと見ていた。おや?さっきの結婚は何度目?の欄、私の回答もFirstになってるぞ。
「私、2度目なのですけどー。」と蚊の鳴くような声でつぶやきながら、
「そっかーアメリカでは結婚してないのだから、このままにしておいてやれ。」私の耳元で、酒瓶を持ったアル中で赤ら顔の私である悪魔がささやいた。
と、すかさず「Excuse me、彼女は初めての結婚じゃない。ここんとこ間違ってるよ。」と森永のエンゼルマークのようにすました顔で彼が言った。
「ばっかーだまってれば、わかんないのにーアメリカでは結婚してないんだから、いいじゃないの。」と酒瓶を振り回しながら悪魔は続けた。
「だって、離婚したのは事実だろう。」エンゼルマークは言い返す。
「では、離婚を証明できるものを提出できますか?」
「日本の戸籍のコピーならあります。もちろん日本語ですけど。」
「戸籍はコピーで構わないのですが、翻訳してノータリーのサインが必要です。」
「ノータリン?なんじゃいノータリンってー」
ノータリーとは公文証明資格者みたいなもので、そのサインがあれば公文書として正式に認められるのだそうだ。銀行などで、その資格者がいればやってもらえるのだという。
面倒くさいけど、結局、今回は離婚の証明書類が揃うまでライセンスはおあずけとなった。帰りの車の中でもエンゼルマークと口論になった。
「Firstのままで良かったのに、よけいなこと言っちゃうから。」
「・・・・・」
「アメリカでは初めての結婚だしいいじゃない。彼女が間違ったんだから、彼女にとってはどっちでもたいした違いはないのよ。本当は彼女も聞こえないふりなんかして、あのままでいいって思ってたんじゃないの?面倒くさいから。」声を大きくして彼の純粋さを講義した。
エンゼルマークいわく「俺は嘘が嫌いなんだ!嘘をついたら一生かけても嘘をつくことに気をつけて生活しなくちゃならない。そういう気にかけなければいけない生活が好きじゃない。」
たいしたことじゃないのになーとなんだか不甲斐ない気持ちはおさまらなかった。
「へー私なんか嘘ついてスリルを楽しむけど。」などと金庫に高級な酒瓶をしまった悪魔がちびりちびりとその酒を飲みながら、
「この世界は、はったりでなんぼの世界なんじゃい!」といい気になっていた。
結局、エンゼルマークのせいで、日本から戸籍謄本を取り寄せるはめになった。面倒くさい思いをするのは悪魔と悪魔を産んだ母なのであった。